126話 ページ27
聖side
「これから移動するにしてもよ、監視カメラとかはどうすんだよ。テロリストの奴らに乗っ取られてる可能性があるぜ」
「正攻法として、テロリストの身包みを剥いで変装するって言う手段があるけど……そんな事して奴等にバレたりしたら、僕らの命が無い。それなら大人しく自主して人質に取ってもらった方がまだマシさ」
「荒っぽい手段は無しっつってたもんな。そんじゃあ、死角を使って逃げるしかねぇのか」
「まぁ、そこら辺は運だよね。とりあえず、まずはフェンスの向かい側にある玩具屋さんに方に行こう。こんな閉塞空間に居るより、広い場所にいた方がまだ安全だ」
「ここはお前を信じるしかねぇか……後の事考えるにしても、まずは安全なとこに行ってからじゃねぇとな」
少し不満気ながらも、岳斗君は僕の事を信じると言った。
こんな状況でも、彼は僕の事を信じると言ってくれた。つまり、僕に命を預けるって言ってるようなものだ。
「……怖くないの？ もしかすると死ぬかもなんだよ？」
そう言うと、彼ははぁ……と一つ溜息を吐き、呆れたように頭を掻いた。
「怖くねぇはずねぇだろ、俺だってお前と同じ人間だぞ。けどよ、それは俺が死ぬかもしれないっていう恐怖じゃない。お前にも前に話しただろ？ 俺が家に帰ったら、家族が魔隆に襲われた事」
岳斗君が前に話していた魔隆に襲われた話。間一髪の所で天空寺さんに助けられたって言ってた話だ。
「あん時は何とか月見の奴が来てくれたから俺と真冬とソラは助かったけどよ……もし、また俺の家族が目の前で死ぬと思うと怖くて仕方ねぇんだよ。父さんと母さんみたいに、また何も出来ないまま死ぬとこを目の当たりにすんのが怖えんだ。
一度助かった命が、こんな事で失われて欲しくねぇんだよ」
自分の顔を片手で隠すと、ギュッと力強く前髪を掴み、歯を食いしばる。
「……ごめん、軽率な質問して」
彼だって辛い経験をしてるんだ。怖く無いはずなんてない。僕と同じように恐怖心に押し潰され無いように必死になってるんだ。
でもやっぱり……こんな時でも、僕は君と自分を比べてしまう。
自分の命しか考えてない僕と、家族の命を考えている君。
君は本当に凄い人だ。僕には持ってない物を、君は全て持っているんだから。
「……行こう、彼奴らに見つかる前に」
自分に劣等感を抱きながら、僕達は音を立てないようにヒッソリとトイレの外へと足を踏み出した。
───だが、本当の絶望はここからだった。
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