115話 ページ16
岳斗side
かれこれ2時間は経った。
ここに来るなり、真冬はセシルを半ば強引に連れて東館にあるファッションフロアへと行き、俺達は西館にあるフードコートでジュースやホットドックを買って暇を潰していた。
「……遅いね……二人とも……」
「多分、どの服にしようかまだ迷ってるんじゃないかな。ファッションは女子の嗜みって言うし」
「たふぃふぁみぃー？ 」
「ソラちゃん、ホットドッグ食べながら喋んのははしたないからやめようぜ……」
だとしてもだ、服選びで普通は2時間かかるなんてあり得ない。かかってもせめて1時間だ。彼女の服選びに長時間付き合わされる彼氏の気持ちってこんな感じなんだな……
「ファッションに本気になるなんて意味わかんねぇ。そんなもん適当でいいじゃねぇか」
ボソッと愚痴を零すと、「それは違うでござるよ」とシンが横やりを入れてきた。
「容姿を整えるのは義務と言っても過言では無い、自らの正体を隠す為にも服を可憐に着こなし周りの男を魅了させる事こそが、世を偲ぶ為の生きる術なのでござるよ」
合ってるようで間違ってるような事をドヤ顔で言うと、ソラはホットドッグをゴクリと飲み込み、シンの事を爛々とした目で見た。
「よくわからないけど、シンはとっても物知りですごいのだ！ 頭いいのだ！ 他にもいろいろ教えて欲しいのだ！！」
「良いでござるよ、何でも答えてあげるでござる。シンは侍であり忍でござるからな」
「おぉー！」
なんだこのくだらない茶番は、二人を見ながら少し呆れ気味にため息をつく。
「ソラ、騙されてる……」
「また時代劇とかに影響されたんだろ。ガキってのはそういう間違った情報を間に受けやすいからな」
「ふーん……で、結局あの子達は何なんだ？ お前らの兄弟かなんか？」
貴史が質問を投げかけて来ると、俺と聖は同じ様に肩を飛び上がらせた。
「えっとー……こいつらはホームステイで預かる事になった知り合いの外国人の子供なんだよ」
「そ、そう、仕事の都合で遠くに行かなきゃならなくなったらしくてさ、帰ってくるまで僕らが預かる事になったんだよ」
「ふーん……道理でおかしな事言ってると思ったぜ。ホームステイの子なら納得が行くな！」
適当な設定で誤魔化すと、貴史はなるほどな！と納得するように頷いた。
神様、こいつを馬鹿な奴に産んでくれてありがとう。初めてあんたに感謝するぜ。
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