59話 双葉side ページ10
双葉side
「そうか……報告ご苦労。もう戻っていいぞ」
椅子に座りながら資料を持ったブレイダーの報告を聞いている。
「あの……所で総司令……」
「なんだ、まだ何かあるのか」
キッとブレイダーの男の方を見ると、男は蛇に睨まれたカエルの様に震え上がり、「な、なんでもありませんっ! 失礼しました! 」とその場から逃げる様に立ち去って行った。
「……はぁ……怖がらせるつもりなどないのだけどな……」
アルティネイターのブレイダー内では私は鬼の総司令と呼ばれてるらしいが、実際の私はプレッシャーに弱くて目つきが悪くなっているだけだ。
だが、この肩書きのせいでありもしない噂などが流れてるらしい。
なんとかこの汚名を払拭しなければ……
「失礼します。総司令、今お時間よろしいでしょうか」
そもそも何故私が総司令なんかになったんだ。あの時に断っておけばこんなにプレッシャーに押し潰される事など無かったはずだ。
だが、あの時の総司令の押しが強すぎたせいで私も断る事が出来なかったのだ。
いや、私にも非があるかもだが、類稀なるカリスマ性と才能があるからと言う身勝手な理由でこんな責任の重い位置に立たせるなど……本当に冗談もいい加減にしてもらいたい。
「あの……総司令? 」
いや、待てよ?
私が前以上に胃がもたれつつある原因は月見にもあるじゃないか。
月見は養子ではあるが、私にとっては可愛い愛娘だ。月見が7歳の頃から見てきたが、成長してくうちにどんどん可愛く、そしてクールにもなって……
何故あんなにも愛くるしいんだ。学校でも老若男女問わず、モテると言うのもわかる。あんなに天使のような子がいたら誰だって惚れるだろう。実際私もそうだからな。
「あのー……聞こえてますか? 」
そんな月見が今ではブレイダーになってるなんて……危険極まりないこの仕事に就くなんて私は正直反対してたのだが、月見があまりにもなりたい意思が強すぎて私もOKしてしまった。あの時、許可しなければこんなにも心配する事は無かっただろう。
だが月見にも仲間ができ……いや、ただそれだけで安全とは言い切れない。月見にもしものことがあったら、私はどうすれば____
「あのっ! 報告に来たんですけど!! 」
1人で悶々と葛藤を繰り返していると、目の前から聞き覚えのある声がし、我に帰っていつもの表情でそちらを見る。
「兵藤か……すまない、少し考え事をな……」
「そうですか……邪魔しちゃってすいません」
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