96話 ページ47
？？？side
シンと静かになった廃工場で1人座り込む。
しばらくすると歯を食いしばり、手に持っていたバールをガラクタに向かって投げつけ、鉄がぶつかり合う音が反響するように響いた。
「どいつもこいつも、この俺をコケにしやがって！！ あれもこれも全部あいつが来たからだ！！ 園崎岳斗……あいつが来なけりゃ、俺はずっと一番のままだった！！ 俺は底辺に居ていい男じゃない！！ 底辺は速飛だ、俺じゃない！！ あいつがいなけりゃ……あいつがいなけりゃ！！！」
「その願い、俺なら叶えてやれるぜ？」
入り口の方から声がし、咄嗟にそちらを振り向くと、灰色のネックパーカーの様なものを着た男が壁に寄りかかっていた。
「な、なんだよお前……」
「なんだよって……おいおい酷いなぁ。俺はお前らのことをこんなにも覚えてんのに」
ネックパーカーの男が山本に歩いていき、目の前で足を止めると、山本は目を見開き、後ろに後ずさりをした。
「な、なんでお前がここに……！」
「さぁ？ どうしてだろうなぁ……」
ニヤッと笑った男の顔に恐怖を覚え、顔面蒼白になり、腰が抜けながらも逃げようと走り出す。
「逃がさねぇよ」
どこからともなく無数の鎖が現れ、逃げようとする山本の目の前を鎖が道を塞いだ。
「なっ……！ 」
「俺はただ取引をしに来ただけだ。お前を殺そうとは1%も思ってねぇよ」
「と、取引……？ 」
「あぁ、それもお前に全く損のない取引だ。さっき言っただろ？ その願いを叶えてやろうかって」
言葉の意味を理解すると、山本は男に近付き、男の服の裾を掴む。
「頼む、教えてくれ！！ あいつらを見返す方法を！！ 」
「まぁまぁ落ち着け」と言いながら山本を引き剥がし、ポケットから赤く妖しく光る宝石の様なものを出す。
「な、なんだこれ……」
「これは『
男は山本に魔紅石を渡し、山本は恐る恐るその石を掴んだ。
「それを使ってブレイダーどもを皆殺しにしろ、そうすればお前の力が強いということが奴等にも証明することができる。良い話だろ？ 」
山本は少し冷や汗をかくが、話の意味がわかると、ニヤッと不敵に笑った。それを見た男も、不気味な笑みを浮かべた。
「ようこそ……ラヴァルダート教団へ」
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