94話 ページ45
岳斗side
投げ捨てた真珠をおっさんが拾い、ズボンのポケットの中に入れる。
「これで納得したろ？ ラヴァルダート教団がどのぐらいヤバイのか。少なくとも今のお前らが敵う相手じゃねぇ。生まれたての子鹿がハイエナに喰らい尽くされるのと同じだ。下手に手を出したら……お前らも喰われるぞ」
おっさんの目は真剣で、とても冷たく鋭い視線だった。
そこに居る全員がその視線で背筋が凍りつくように体が竦んだ。
「今はS級ブレイダーチームの睡蓮卿って奴等がラヴァルダート教団の事について調べている。お前らは今まで通り自分達の任務果たしてりゃいいんだ。死にたくなかったらな」
「じゃあな、お前らもさっさと帰れよ〜」というものテンションに戻ると、背中を向けながら手をひらひらさせ、そこから去って行った。
「…………」
沈黙、重苦しいような沈黙がしばらく続いた。
「……ご、ごめん……僕もそろそろ帰るよ」
空気に耐えられないように聖はそう切り出す。
「あ、そしたら私も一緒に____」
「セシル、今日は別々で帰ろう」
「……え？ 」
突然過ぎる聖の言葉に、セシルは目を見開いて驚く。
「な、なんで？ 急にどうしたの？ 聖がそんな事言うなんて珍しい……」
「…………」
「も、もしかして……聖に何か悪い事しちゃったかな……悪いとこがあったなら遠慮なく言って、ちゃんと私直すから……」
「……行こう、シン」
「聖……」
聖はセシルの方に背中を向けたまま、表情は見せずにそこから出て行った。シンもセシルを一目見てから、気まずそうに聖を追いかけた。
「聖！！ 」
聖を追いかけようと走り出すが、その前に真冬がセシルの腕を掴んだ。
「待ってセシルちゃん。今は追いかけない方がいいよ」
「で、でも……」
「聖さんにも何か理由があるんだよ。今はそっとしておこう？ 」
セシルに静止を求めると、セシルは顔を伏せながら小さな声で「わかった……」と答えた。
「…………」
ラヴァルダート教団……奴等が何者なのか知らないが、魔隆絡みの奴等なのは間違いない。
木下のおっさんは下手に深入りしなければ大丈夫と言っていたが……
本当に、俺はそれで良いのか……？
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