69話 ページ20
岳斗side
「グォッ……！！ 」
顔を掴まれた魔隆は、必死に逃げようとジタバタと暴れるが、逃げれる気配は一向になかった。
「抵抗しても、もう遅い」
冷たい視線で魔隆を見つめ、右手に握る力を入れていく。
恐怖と苦痛に悶え、抵抗が激しくなっていくが、永也はその抵抗にも動じず、リンゴを片手で握りつぶすかの様に破裂音が鳴り響いた。
あれ程抵抗していた魔隆はグッタリと動かなくなり、黒い粒子となって消えていった。
「あれが永也君……？ そんな……あれじゃまるで……魔隆と同じじゃないか……！ 」
聖の言う通りだ。
永也から放たれる黒い粒子、見るもの全てを喰らい尽くすかの様な不気味な左目、頭すらも軽々しく握りつぶす腕。
魔隆の黒い返り血を浴びて立っている永也は、魔隆そのものだった。
「君達には指一本、触れさせないから」
顔についた血を左腕で拭き取り、他の魔隆の方へと体を向ける。
魔隆達は少し慄きながらも、一斉に永也へと襲いかかり、永也も魔隆達に向かって単身で向かっていった。
永也は魔隆の攻撃をかわしていき、次々と1人で魔隆の頭を殴り飛ばして行く。
その異様な光景に、俺達は立ち尽くす事しかできなかった。
「レイヴン無しで魔隆に似た力で立ち向かうなんて……そんな人間、見たことないでござる……！ 永也は一体……何者なんでござるか……！？ 」
「……人工的魔隆兵器、『Artificial beast』。通称『アーティビースト』」
ボソッと知らない言葉を月見は呟いた。
「アーティビースト？ 」
「人の手によって作り出された人造人間……いえ、人造魔隆よ。人の中に魔隆から出るリクトルを入れ、その人間を魔隆に変える最低で最悪な実験で生まれた産物。それがアーティビースト」
「アーティビースト……それが、永也君って事？ 」
「……そう言うことになるわね」
魔隆のリクトルを入れられたのなら、永也から出る黒いリクトルについても納得がいく。
でも、なんで永也がそんな物を？
「これで……最後」
最後の魔隆の頭を右腕で吹き飛ばし、襲ってきた魔隆は全て黒い粒子となって消えていった。
「す、すげぇ……俺達が出る間も無かったじゃねぇか」
一息ついて一旦こちらを振り向くが、何かに気づいた永也は俺達を見るなり目を大きく見開いた。
「避けて！ 上だ！！ 」
「上？ 」
珍しく大声を張り上げ何か危険を知らせる。なんなのかと上に顔を向けると____
____白髪の青年が、黒い長剣で俺達に斬りかかってきていた。
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