68話 ページ19
岳斗side
それぞれブレイダースーツに着替え、出現現場である大通りに着くが、一般人は1人もおらず、その場には複数の魔隆と見慣れた黄色いジャージの青年が突っ立っていた。
「永也！！ 」
名前を呼ばれたのに気づくと、永也はこちらの方へと振り向く。
「あ……岳斗達だ」
魔隆が目の前にいるにも関わらず、俺達に「おーい」と手を振る。
「悠長に手を振ってる場合か！！ とにかく早くレイヴンを____」
その瞬間、1番胴体が大きい魔隆が油断している永也に向かって飛びかかる。
「！ 永也！！」
俺達もすかさず永也に向かって走り出すが、永也は逃げようともせず、飛びかかってくる魔隆をジッと見つめた。
「……大丈夫、僕に任せて」
永也は左目に巻かれた包帯に手を掛け、その包帯を外す。
それと同時に、雄叫びを上げながら永也に鋭い右手を振り下ろし、その衝撃で砂埃が立ち、風が俺達を襲った。
「っ……！！ 」
シンとソラは擬態化してなんとか飛ばされないように風圧に耐える。
俺達も風に飛ばされないように耐えるが、砂煙のせいで永也と魔隆の姿が見えずにいた。
「くそっ……永也……！」
あの魔隆の攻撃をモロに受けたに違いない。
どうなってるか見えないが、きっと無事にはすんでな____
突然、背筋も凍るような悪寒を感じ、汗が引き戻されるような感覚がし、憎悪にも似た殺気が俺達を襲った。
あの時の人型魔隆の時と感覚が似ていたが、あの時以上の殺気なのはわかった。
「岳斗……あれ……」
月見が見てる方に視線を向けると、砂煙で姿も見えないとこから、少し黄色じみた黒く禍々しいリクトルがハッキリと大きく見えた。
「この感じ……魔隆でござるか……？ 」
「薄っすらだけど、黒いのが僕にも見えるよ」
そのリクトルの色は見覚えがあり、不思議とおっさんの家で掃除していた時のことを思い出した。
「見覚えがある……あのリクトル……」
あの時、異臭まみれの部屋で初めて会った時に見たあのリクトルと同じ色だ。
砂煙が晴れていき、魔隆と永也の姿が露わとなっていく。
その光景に、俺達は目を丸くした。
砂煙が消え、そこに居たのは____
黒い粒子を放出する大きな右腕に顔を掴まれ持ち上げられている魔隆。
そして、左目が化け物の様に黒くなり、頭から黒い左角を生やした
変わり果てた姿の永也だった。
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