62話 ページ13
岳斗side
「でもまぁ、今の話でわかったぜ。あいつがずっとあんな風にふてくされている理由が」
疾風の方に視線を向けると、壁に寄りかかって腕を組み、目を瞑って1人で何かを考え込んでいた。
「疾風……ここに来てからずっとあのまま……」
「偉そうにしちゃって、ほんとあいつ見てるだけでムカつく」
未鶴は疾風を何故か疾風を睨みつけては腹を立てていた。
「未鶴さん、疾風さんのこと嫌いなんですか？」
「そりゃあね、いっつも偉そうでお高くとまって、1番になる以外は全く無頓着で、挙げ句の果てには勝負を挑んだとしても「くだらない」とか「お前じゃ俺に勝てない」とか、散々他人を見下してさ。あぁぁー！！ あいつの事考えるとイライラしてくる！！ 」
愚痴はだんだんと暴言に変わっていき、自分の頭を掻き始める。
「そんなにあいつの事嫌いなのかよ……」
「大っ嫌いに決まってんでしょ！！ 大が何千個付くほど大っ嫌い！！ だから私はあいつに負けるわけには行かないの！！ 本当の事を言えば、私もこんなとこで油売ってる暇なんてない！！ 私は一刻も早く、あいつを追い越さなきゃなんないってのに……！！ 」
意味ありげな言葉を言いながら、ギロっと疾風の方にガン飛ばす。
「ひっ……！ 」
未鶴の鬼のような形相にセシルは怯え、聖の背後へとサッと隠れた。
「とりあえずよ、任務も終わった事だし、今日はこの辺で解散にしねぇか？ 空気もなんだか悪いしさ」
「何言ってんの、その空気を悪くしたのがあんたなんでしょ」
「うっ……さっきから痛いとこ突くなよ……」
「言われても仕方ない事してるお兄ちゃんがいけないんじゃん。ちゃんと反省しなよね」
「へいへい、わかりましたよー……」
「ほら、疾風も機嫌直してさっさと帰るわよ」
「…….黙れ、お前に言われなくてもわかっている」
「はぁっ！？ あんたねぇ！！ 」
それぞれが口々に会話しながらそこから出て行っていると、帰ろうとした俺に月見が歩み寄ってきた。
「岳斗、話があるんだけど。時間いい？」
「ん？別にいいけど……」
「お兄ちゃん、何やってんの？」
「あ、悪りぃ。先にお前らは帰っててくれ。ちょっと話があるからよ」
「ふーん……わかった。早く帰ってきてよ」
そう言い残してそこから出て行くと、さっきまで少し騒がしかった休憩室は、一瞬にして静かになり、その場には俺と月見の2人だけが残った。
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