プラチナの王子様 (ページ28)

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スネイプ先生に連れられて来たのは、すぐ近くの血文字の場所だった。

いつも見張っているフィルチの姿はなく、大きな水溜りだけがぽつんと目に入った。

「掃除したまえ、土御門。マルフォイ、見張りたまえ」

真緒は唖然とした。
(嘘！こんな露骨な依怙贔屓見たことない…)

連れられている間は文句たらたらだったドラコはニヤリとして、スネイプ先生の姿が消えると椅子に座って足を組んだ。

「ったく…何で僕がこんな役目をしなきゃなんないんだ」

如何にも不満気な表情を作って言うが、口元が今にも笑い出しそうにぴくぴくとしている。
「こっちの台詞よ」と憤慨しながら真緒はモップを動かす。

「ドラコが引き止めなきゃ、罰則なんてなかったのに」
「君が言いたいことだけ言って立ち去ろうとするからだろ」
「私のはお礼でドラコのは喧嘩を吹っかけてるんだから訳が違うわ、まともに話も聞いてくれないし」

「耳から煙出してる奴の話をまともに聞く人間がいれば教えてくれるかい」

(元気爆発薬のこと、忘れてた！)

真緒はぴしりと固まった。
顔を赤くして掃除を始めた真緒を見て、ドラコは満足気に鼻を鳴らした。

「最初から大人しくしてれば良いんだ」
「もういいわ」

(相手にするんじゃなかったーーー)

真緒は一心不乱にモップと向き合う。
水溜りは思ったよりしぶとく、ドラコとのやりとりを思い出させた。

椅子に座るドラコの、話しかけているともとれる独り言は無視し続けて、掃除をする。

(私に言ったわけじゃないなら良いなんて、そんなことあるわけないのにーー…どうしてわからないんだろう…)

(そもそもどうして、平気で酷いことを言うの…)

色々考えてたら視界が滲んでくる。
鼻をすすって、泣いてるのがバレないよう俯いてモップだけを見続けた。

「おい、泣くことないだろ」

真緒が鼻をすすっているのを風邪をぶり返したのかと見つめていたドラコは、涙ぐんでいるのだと気付いてぎょっとして駆け寄った。

「分かった、残りは僕がやってやる」
「良い、自分でやるから」

モップを奪い取ったドラコから更に真緒が奪い返す。
涙の訳が検討もつかないドラコは、言い訳がましく早口に話しかけた。

「一応言っておくけど、罰則を決めたのはスネイプ先生だ、僕の意思はないぞ」
「そんなこと分かってるわ」

「じゃあ何だ、煙の話か？馬鹿力って言ったからか？もしかして、グレンジャーのことじゃないだろうな？君は純血だし、関係ないだろ」