緑色の目をした怪物 ページ38
にわかには信じ難い。が、見栄を張っているわけでも嘘というわけでもなさそうだ。
『あ、そろそろ予約時間だ!あんず先輩、今度は絶対一緒にお昼食べましょ!』
「あ、うん」
彼女のことだから大丈夫だとは思うが……念の為確認をしておこう、とあんずは事務所の方につま先を向けた。
*
「星見さん?今朝ちゃんと提出してくれましたよ。ええ、不備もなかったです。良い教育をしましたね」
「いえ、自分はなんにも……」
とりあえず、彼女がしっかり仕事をこなしていたことにひとまず安心する。
「(そうだよ、私はなにもしていない。それよりあの子を信じなかったことを反省しなくちゃ)」
そう思っていると、入口の方からあまり見覚えのない人が入ってくるのが見えた。
確か、コズプロの上層部のディレクターだったはずだ。
「おお、あんずちゃん。最近調子はどう?何か困ってない?」
「こんにちは。そうですね、今のところは」
挨拶もせずにどしどしと部屋に入り、馴れ馴れしく自分に触ろうとするこの男のことを、あんずはどうしても好きになれなかった。
でもこれもそこそこ良い立場に就いた代償みたいなものなんだろう、と我慢して笑顔を作る。
「そういえば凄いね、噂の“星見”のプロデューサー!若い子には不評みたいだけど俺達感動してね!やっぱりアイドルってのはこうでないと!」
「はは……」
それは“革新的”だとか“新風”だとかいう評価をよくいただく自分への当てつけか。
こういうところもこの男に苦手意識を持つ理由のひとつなのだが、嫌味といじりの区別がつかないこの男はさらに続ける。
「そういえば俺達話してたんだけど、ここで売り出し中のトリックスター?っているじゃん」
可愛い後輩の次の矛先は大好きな仲間達らしい。
正直作り笑いを続けるのもしんどかったが、これも仕事だと自分に言い聞かせて表情筋に力を入れる。
しかし、
「あれにさぁ、“星見”を専属プロデューサーとしてつけたら?絶対売れると思うんだよねー」
その言葉に思わずあんずは笑うのをやめた。
「だって“星見”って有能なんでしょ?やっぱそういうのについてもらった方が彼らにとって、」
「ちょ、ちょっと!!」
そのあんずの表情に気づいたらしき上司が割り込んでくれたお陰で本当に助かった。今止めてくれなかったら自分の口はどんな言葉を紡ぐのか想像も出来なかったから。
265人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅鮭@くじら(プロフ) - 塩おにぎりさん» わ〜い!まじですか女の好みが合いますね!!!文字制限かかるほどの感想本っ当嬉しいです( ・ ・̥ )♡今月中には続編に移行する予定なのでそちらもよろしくお願いします!! (2022年8月21日 19時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
塩おにぎり - あ〜、好きだぁ!敬人ぉ!英智ぃ!星見ちゃあん!!ってなりましました。星見ちゃん可愛い。あぁいう性格の子大好物です。ハラハラドキドキニヤニヤしながら見てます。文章もすごく好きです!更新頑張ってください!まだまだ言いたいことあるのに文字数が…… (2022年8月21日 15時) (レス) @page48 id: 783bc2bad6 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 瑞花さん» 物書きとしてこれ以上ないほど嬉しいコメントありがとうございます!!なんかもうこっちが泣きそうです(;;)瑞花さんの期待に応えられるよう頑張ります!! (2022年8月13日 10時) (レス) @page38 id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
瑞花 - うわあああなんか辛い…2人とも(あんずと夢主)辛いんですが…涙なしに見れないんですが……えぇ、ちょ、…ええええ(動揺)これからいい方向に進んでいくことを願う…ううううう更新頑張ってくださいっ…!!(涙ボロボロ) (2022年8月13日 0時) (レス) @page38 id: ffe19b4490 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 結さん» マヨさんはどうしても夢主とエンカさせたかったから出しましたwマヨさんいいですよねわかります……!嬉しいコメントありがとうございます!! (2022年7月20日 22時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ