手のひらの上でサンバを踊るな【あんスタ】

・ ページ30

「うん、口外はせん。流石にそれは約束する。ただ……」




スマホを操作する手は止めないまま零は呟くように言う。




「同情はする。柄じゃないかもしれんがの」
「うん……彼女に酷いことをした自覚はあるよ」




英智もまた写真を削除する手を止めないまま応じる。
が、急に写真が送信されなくなったので思わず顔をあげれば、零はまっすぐにこちらを見ていた。




「彼女だけじゃない。お主もじゃ」
「は？」
「お主も愚かで、哀れだ」




その赤い目は何もかも見透かしているようで、不快で、それでいてその言葉にどこか安心してしまったような気がして……

英智は再びパソコンに向き直る。



「ちょっ、天祥院くん何してるの」
「ホールハンズのプログラムの大元にアクセスして朔間くんが僕と凛月くんにメッセージ送れなくなるようにプログラム書き換えてる」
「は？？？待て待てふざけんなほんとにまじで」



パソコンを奪おうと例のバリケードを乗り越えて来ようとする零をひょいと避け、英智はいつもの笑みを浮かべる。



「病人に負けて恥ずかしくないの？」
「お主ほんとにふざけんな……これで我輩がキレて星見のこと言いふらしたりするかもとか思わないワケ？」
「ははは」




笑って誤魔化したが、英智は知っている。

朔間零は人間が好きだ。困っている見ず知らずの後輩達を思わず助けてしまうほどに大好きだ。

そして、この件を口外したとして、この事実を知って間違いなく一番傷つくのは星見Aだ。
だから零は喋らない。
見ず知らずの少女に傷ついてほしくないから。本当にそれだけのために。




腹が立つから絶対に言ってやらないけど、天祥院英智はそのことをずっと前から知っていた。

星の灯火、消したの誰だ？→←ちなみに写真はビュープラで撮った

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す