・ ページ25
「ソラ、見テ」
「?スマホの画面ですか?うわッ何この色汚いです!」
「これが空五倍子色だヨ」
夏目のその言葉に宙は自分が鎌をかけられたことに気がついた。
この人にはきっと何もかも見透かされていたんだろう。
「ししょ〜……気づいてたんですか。あの子の色」
「うん。誤魔化そうと必死みたいだったから協力したけどネ……嗚呼、無理に何色だったかは言わなくていいかラ」
だって、今の宙の顔は可哀想なほど真っ青なのだ。それはまるで何か恐ろしいものを見たかのようだった。
それにしても、と夏目は思う。
「意外だったナ……新プロデューサーは無知って概念のの擬人化みたいな子だと思ってたけド、そんな一面もあるんダ」
「ち、違います!!星見さんは悪い人じゃないです、多分」
宙にしては強い語気に思わず目を見開く。
「えト、多分っテ?」
「わかんないんです。あの子のことはなんにも……だってあの子、本当に色がないから……!」
“色がない”とはどういうことだ。
そう思った夏目の表情に気がついたのか宙はさらに付け加える。
「見えにくいとかじゃなくて、本当になんにもないんです。まるで生きてるのに生きてない造花でも眺めてるみたいな気分になって、宙、びっくりしちゃって……」
「……そっカ」
宙には自分の色は見えているようだから、目の不調ではないのだろう。きっと本当に新プロデューサーは無色なのだ。
そこで、ふと夏目は先日調べた彼女の経歴について思い出した。
「これはあくまでも憶測だけド、星見ちゃんは空っぽなんじゃないかナ」
「空っぽ?どういうことです?」
「人間っていろんな経験をして出来上がっていくものでショ。けど、あの子にはその経験自体がなイ……というか忘れてるんだと思ウ」
全然納得いってない様子の宙に、夏目は昨日調べたことを伝えようか迷う。
正直、気分の悪い話だ。純粋で綺麗なこの子には正直話したくなかった。
「あー、えっとネ、人間の脳って不思議で自分にとって不都合な記憶って自己防衛のために消しちゃうことがあるノ。あの子は多分そレ。だからなんにも憶えてなくって、空っぽのまマ」
「……色を失くすほど、全部を忘れちゃったってことですか?まるで人生全てが不都合だったみたいだな〜……」
その言葉に夏目は押し黙る。
“人生全てが不都合”。彼女はきっとそうだったのだ。そう思ってしまうほど星見の家で起きた“それ”は嫌な記憶として彼女を苦しめたのだろう。
265人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅鮭@くじら(プロフ) - 塩おにぎりさん» わ〜い!まじですか女の好みが合いますね!!!文字制限かかるほどの感想本っ当嬉しいです( ・ ・̥ )♡今月中には続編に移行する予定なのでそちらもよろしくお願いします!! (2022年8月21日 19時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
塩おにぎり - あ〜、好きだぁ!敬人ぉ!英智ぃ!星見ちゃあん!!ってなりましました。星見ちゃん可愛い。あぁいう性格の子大好物です。ハラハラドキドキニヤニヤしながら見てます。文章もすごく好きです!更新頑張ってください!まだまだ言いたいことあるのに文字数が…… (2022年8月21日 15時) (レス) @page48 id: 783bc2bad6 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 瑞花さん» 物書きとしてこれ以上ないほど嬉しいコメントありがとうございます!!なんかもうこっちが泣きそうです(;;)瑞花さんの期待に応えられるよう頑張ります!! (2022年8月13日 10時) (レス) @page38 id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
瑞花 - うわあああなんか辛い…2人とも(あんずと夢主)辛いんですが…涙なしに見れないんですが……えぇ、ちょ、…ええええ(動揺)これからいい方向に進んでいくことを願う…ううううう更新頑張ってくださいっ…!!(涙ボロボロ) (2022年8月13日 0時) (レス) @page38 id: ffe19b4490 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 結さん» マヨさんはどうしても夢主とエンカさせたかったから出しましたwマヨさんいいですよねわかります……!嬉しいコメントありがとうございます!! (2022年7月20日 22時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ