隣の君は。

隣 .23 ページ23

部屋に戻る途中で、
足を止めると、岸が振り返って。




『 ねぇ、何であんなことしたの？ 』


優「 え、だって、
お前、泣きそうな顔してたし 」


『 そ、そんなことないし！ 』


優「 嫌、だった？ 」


『 え？ 』



声があまりにも優しくて
私を見る目が愛おしそうで
いつもと違う岸に、私の心はまた揺れる。




優「 俺に引き止められて、嫌だった？ 」


『 嫌、じゃないけど 』


優「 よかった、
でも、強引なことしてごめんな？ 」




岸はそう言って
また私の頭を撫でた。

あれ、何か調子狂うな。


岸にはいつもみたいに
ふざけててほしかった。

なんか、ぐちゃぐちゃだ。




優「 これからは、俺が守ってやっから
もう我慢すんなよ？ 」


『 きし…… 』


優「 泣く？ 」


『 泣か、ない… 』


優「 だから我慢すんなっつったじゃん 」


次の瞬間、岸に頭をガシッと掴まれて
そのままふわりと抱きしめられた。




優「 泣け、」


その一言で、
自分でもびっくりするぐらい
涙が溢れて止まらなかった。




強く抱きしめられてるのに、
どこか優しくて、安心する。


でも、ここは合宿所の廊下なわけで。




海「 あ、あの、ごめんね！
別に、見るつもりじゃなかった、いや
見てないから！俺は何も見てないよ！じゃ！ 」


明らかに挙動不審になった海人くんが
独り言を言いながら通り過ぎて行った。




優「 あいつ、ほんとピュアだな 笑 」

頭上で岸の声が聞こえて
胸に心地よく響きわたる。




『 岸、ありがと 』


優「 もう大丈夫？
って目真っ赤じゃん 」


そうやって笑ってくれる岸に
胸がいっぱいになった。

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