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雨乞い ページ20

呼吸も整い、幾らか落ち着いた。


「涼雨、なんで私の名を……?」


涼雨に会ったとき、私は名を名乗っていなかった筈だ。


「ああ、それは、Aが私を求めてくれたからだ」

「貴方を、求めたから……」


確かに、私は涼雨を求めていた。

でも、何故それで名前が分かるのだろうか。


「やはり、気付いていなかったか。……A、私は人ではないんだ」

「人、じゃない?」

「そう。私は雨を降らす者」

「それって、どういう……」

「人は水が無いと生きて行けない。その水の源は、雨だ。だから日照り続きでは困るだろう?そこで、昔から行われているのが雨乞いだ。私は、人が雨を乞う強き思いで雨を降らせる。そして、降らせた雨が降っている間は、この世界に留まるんだ」


何だか、夢の中に居る様だった。

信じられない事が、私の目の前に在る。


「じゃあ、この前のも、今のも、雨乞い?」

「ああ。この前のも、今のも、だ。そして、今のはAがした雨乞いだ」

「え……」

「昨晩、お主は願っただろう?雨を、と。……本来、あの程度の個人の雨乞いでは力が足りないのだが、お主はよっぽど思いが強かったのだろうな」


少し、恥ずかしくなった。

ただ、涼雨に会いたいと思う気持ちがそこまで強かったのか、と。


「で、名前はどうやって知ったのさ」

「ああ、すまない。話が逸れていたな。まあ、簡単な事だ。お主の思いとともに乗ってきただけのこと。この前の雨の時のお主の記憶と、少しのお主の事が、な」

「その中に、名前が入ってたのね」

「ああ。……ちなみに、普通俺は人とは触れ合えない。生きる世界が違うからな」


何のことか、よく分からなかった。

“触れ合う”の意味が。


「難しかったか?簡単に言うとな、俺は人には見えない。感じられないんだ。そういう結界というか、術がかかっているからな。無理に、人と、人じゃない者が接触しないように」

「じゃあ、私はどうして?」

「分からん。ただ、波長が合ったのかも知れんな」

「そう」


遠くを見つめる涼雨の横顔ははかなくも美しくて。

貴方は人では無いのだと感じた。


「雨が止んできたな。思いが切れてきたのだろう。元々、ひとりの思いだったから」

「会えないのね」

「ああ、会わん方がいいだろうな、俺達は。……だが、やはり何かの縁だ。その傘はお主に」


そう言い残すと、涼雨は風に乗って消えて行った。

はかなく、散る様に……。

私はしっかりと傘を抱き、涙は出さなかった。

奇跡から生まれた軌跡→←雨乞い



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くるみ(プロフ) - MIZOREさん» はじめまして!コメント&応援ありがとうございます。これからも二人でいろんなお話を出していけたらと思ってますので、よろしくお願いします。 (2017年9月13日 18時) (レス) id: 1b7b0b02d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE - 暁さん、くるみさん、はじめまして!とても感動できる内容で、読みやすかったです。更新頑張ってください! (2017年9月13日 18時) (レス) id: a68bb744ad (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 星月夜さん» 心あたたまるコメントをありがとうございます!今後も頑張って二人で更新していこうと思うので、この作品をよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ (2017年9月11日 7時) (レス) id: 23374c4c5d (このIDを非表示/違反報告)
星月夜 - 短編集なので当たり前なのですが、一つ一つが簡潔に書かれているので読みやすいです!最初のお話は本当に感動しました! (2017年9月10日 23時) (レス) id: b0ad28a90c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるみ&暁 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年9月10日 12時

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