Prisonerworld【小説】 (ページ39)

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風邪【守】【一颯】ページ39

探索に行ってくると嘘をついてレボディショナルのシェルターに潜り込み、四温の部屋にそっと謝罪を綴ったメッセージカードとお礼にも満たない袋に包まれたお菓子を隠す様に置いてきて、何事も無く帰って来た俺だが、今はベッドの中に蹲っている。
いや違う、本当は湊とか蝶葉ちゃんの手伝いとか差し入れとか、そういうのをしようと思ってたんだ。
だがしかし今の俺は布団の中に包まり、呻き声を上げている。それは何故か。

「…引くもんなんだなぁ、風邪って…」

昨夜のあの低い気温の中であんな軽装備での長時間見張りが祟ったのか、俺は哀れにげほげほと咳をして痛む腹を抑えるみたいに丸くなって、布団の上に倒れこんでいる。
俺が風邪を引いた、なんて聞いたらみんなびっくりだろう。実際俺もびっくりだ。箱庭に来てからは毎日元気に働いていたのだから、風邪とか本当に予想してなかった。
ぺたりと額に手を当てるけど、熱くなった手ではどれくらいの熱かとかは分からないし、やけに熱くなった手を当てるのは少しの不快感があった。
結局壁に額をくっつけて、壁の冷やっこさに思わずため息がでる。安堵とかが混じったり、風呂とかに入って気持ちい時に出る様なため息だ。まぁ気持ちいいかと言ったら気持ちいいが、頭痛も腹痛も変わる訳では無かったけれど。

「ほんと、情けないよ…未熟、みじゅくすぎる…みじゅくのけしん……」

どこか意識だけが遠くに行って、呂律さえも回らなくなってくる。口からは無意識に弱音が漏れるし、数秒もせずに今の俺のあまりの情け無さにぽろぽろと涙が溢れてくる。更に情けない。多分今の俺は凄くダサい。それだけは理解出来た。
そろそろヤバい、とは分かっているけれど、怖くて眠りたく無かった。
第一部隊の隊長の癖に、風邪くらいで寝込まないでとか言われたら、間違いなく心が折れる。絶望する。

絶望する…けど、今だけは寝たって許してほしい、いや許せ、俺もいつも頑張ってるんだから。俺を褒める代わりに風邪ってのを理由にして寝込ませてくれ。
それにガーディアはみんな優しいし、そんな事言わない…筈だ。
だから俺は寝たっていい。うん、大丈夫。だから今日はもう、寝てしまおう、これ以上俺が醜態を晒さない様に。
半ば洗脳みたいに自分に言い聞かせて、瞼を下ろす。疲弊していたらしい体からは、すぐに力が抜けて意思は深く沈み込んだ。