帰還 【守】【荒川瑠架】 ページ27
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そのまま、駆けに駆けて。
やっとのことでシェルターが見えてきた。
シェルターの前には人影が二つ。
第一の隊長と、黄色いパーカーを着たこちらも第一の隊員。
隊員の方は、確かミナトの彼女なんだっけ。
こちらに駆け寄ってくる彼らに蝶ちゃんとミナトを託す。
身体が軽くなったのと同時に眠気がブワッと襲ってきた。
……眠い。眠すぎる。
今にも永眠しそうな脳みそを抱え、それでもアタシはそこに留まっていた。
理由は一つ。ミナトが心配だったからだ。
ハサミ女に記憶を奪われ、敵と味方が逆転したミナト。
ミナトにとって今の状況は恐怖以外の何物でもないだろう。
敵の中に、たった一人。
その丸い瞳は不安そうに揺れている。
どうしたものかと思ったその時。
___第一の隊長が、ミナトを力強く抱きしめた。
「心配かけんなよバカ」
その言葉に、ミナトの瞳からぽろぽろと涙がこぼれた。
「あのね…奏さん達も優しかったの…僕もうこんな戦いしたくない…何か他にもきっといい方法あると思うんだ」
一言ひとこと、紡ぐように。
ミナトの口から発された言葉から、不安は少しも見当たらない。
あぁ、これなら大丈夫だ。これなら、ミナトは戻って来れる。
多少時間はかかるかもしれないが、それでも___
「え?なんで僕、颯に抱きしめられてるの?」
思わずずっこける。
なんと、ミナトは第一の隊長に抱き締められるなり速攻で記憶を取り戻した。
「思い出したのか?!こんなすぐ?!」
「なんでそんなおかしい顔してんだよ。てか、僕なんで泣いてんの」
さっきまで流していた涙を不思議そうに拭いながら、ミナトはそう言っておかしそうに笑った。
蝶ちゃんが言うに、記憶が戻ったのはあのハサミ女のおかげだそう。
“おかげ”といってもそもそもはアイツの所為だし、代わりにミナトはレボディショナルの連中の記憶を失った。
内部事情を漏らさないためだろう。用意周到な奴だ。
レボディショナルの連中にはかなりのダメージを与えたようだし、これでいったん終了ってとこかな。
太陽の下、じゃれ合うミナトと第一の隊長を横目に、アタシは蝶ちゃんに声を掛ける。
「んじゃ、アタシはちょっくら二度寝してくるよ。蝶ちゃんも寝た方が良いぜ、疲れただろ?」
「……そうですね」
蝶ちゃんの表情はどこか暗い。
……ま、思うこともあるだろうしな。そっとしておくか。
アタシは蝶ちゃんを置いて、一人シェルターを降りていった。
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白 - 更新しました! (2020年3月1日 18時) (レス) id: a0941ce1f9 (このIDを非表示/違反報告)
白 - お久しぶりです。更新しまーす! (2020年3月1日 17時) (レス) id: a0941ce1f9 (このIDを非表示/違反報告)
しじみごはん(プロフ) - 更新しましたーー!!! (2020年2月23日 11時) (レス) id: a2f3698a22 (このIDを非表示/違反報告)
しじみごはん(プロフ) - 更新します〜〜 (2020年2月23日 10時) (レス) id: a2f3698a22 (このIDを非表示/違反報告)
星蝶 - 更新しました! (2020年2月11日 22時) (レス) id: 6888f46f20 (このIDを非表示/違反報告)
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