Prisonerworld【小説】

駆ける 【守】【荒川瑠架】 ページ26

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……あぁ、クッソ。眠すぎて死ぬ。死んじまう。


ミナトを背負い蝶ちゃんを抱え、なんとか地上へ脱出したアタシは、ただひたすらにガーディアのシェルターへとひた走っていた。

脱出するときに起こした爆発で思いのほか集中力を使ったらしい。
昨日の寝不足も祟って、頭はもう眠気でフラフラだった。
倒れ込みそうになるのを堪えて、一足ごとに地面を蹴ることに集中する。

幸い誰かが追ってくる気配はない。
それも当たり前か。
あの場にいた奴らは全員、爆発に巻き込まれたのだから。

そう、全員。ハサミ女も例外じゃない。
蝶ちゃんからの攻撃だけで十分瀕死状態だったのに、加えてあの爆発。
生きている可能性は限りなくゼロに近いだろう。

腕に抱えている蝶ちゃんは目をつぶりながら、いつも通りの無表情。
その顔に、不思議なほどに安堵する。
あの時のどうしようもない狂気は、どうやら無事に消え去ってくれたようだ。

蝶ちゃんのあの口ぶりからするに、ハサミ女は蝶ちゃんの知り合いらしい。それも、箱庭(ここ)に来る前からの。
そういう奴らは思いのほか多い。

兄弟で、友達で、親友で、それなのに敵同士だなんて。
ここから出たい・出たくないで、こんなふうに殺し合いまでするなんて。


＿＿＿本当、馬鹿らしいなぁアタシたち。



深く息を吐き、そんな思いを隅へ追いやる。

シェルターはまだ遠い。
今は、次の一歩を踏み出すことだけに集中しよう。




しばらくして、背中にもたれるミナトがもぞもぞと動き出した。


「ん……？だぁれ？」


小さく発されるその問いに、アタシは少しホッとした。
どうやら抵抗する気はないらしい。
ここで抵抗されたら、今のアタシじゃ受け止めきれねぇもんな。


「大丈夫だから。アタシを信じろ」


ミナトは無言のまま。
ただ、回された腕に少しだけ力が入ったのが分かった。


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