【短編集】僕は君の理想に程遠い (ページ5)

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幸村精市と無愛想な彼女(★) ページ5

俺の同棲中の彼女は、無愛想だ

顔は天使と見紛うほど綺麗だし、性格も悪くない。頭だってあの柳と張り合うほど良い

けれど、どうしても、反応に可愛らしさがひとつもない

「A、今日の晩ご飯は？」
「決まってない」
「和食がいいなあ」
「焼き魚は面倒」

「A、デートしよう」
「映画なら行く」
「あれ、映画好きだっけ。見たいのあるの？」
「別に」
「え、なら何で？」
「精市と話さなくて済む」

「A、愛してるよ」
「うん。知ってる」

今から思い返してみれば、中学の頃から彼女がしおらしかったことなんてなかった

付き合い始めた時も、俺からの一世一代の告白に、
「何？幸村が私を好き？知ってるよ、そんなこと。え？付き合ってほしい？どこに？」

初めて手を繋ぐ時も
「何で手繋ぐの？え？恋人らしいことがしたい？その必要性は？迷子にはならないよ、心配しなくても」

本当に彼女は俺のことが好きなんだろうか

そんなある日のことだった

彼女のスマホが、テーブルの上に無造作に置いてあったのだ

俺は興味本位でボタンを押した

すぐにロック画面が表示される

4桁の番号を入力するようで俺は彼女の誕生日を入れた

開かない。違ったようだ

うーん…

ふと思い立って、試しに自分の誕生日を入れた

「えーっと、0、3、0、5っと…」

するとロックは意外にもあっさりと解除できてしまった

「え、え？」

緩んでしまった口を直そうと、頬を叩いて再度画面を見た

「…ん？………………え、え、え！？」

その待ち受け画面は紛れもなく俺だった

試しに写真のホルダを開く

その中はいくつかのファイルに分かれていて、その中の一つに、
〔精市〕という名前のファイルがあった。

それを開くと、ほとんどが隠し撮りで、正面から写っているものは本当に僅かな俺の写真がたくさんあった

「あ、精市。私のスマホ知らない？って、え、ちょ、何やってんの！」

「いや、ちょっと。フフ、フフフ」

「どうやって開いたの！？何見たの！？」

「写真のホルダしか開いてないよ」

「それが1番ダメなやつ！」

こんなに動揺しているAを見るのは初めてで、口が緩む

「ねえ、何ニヤニヤしてるのよ！」

「いや、Aも可愛いとこあるんだなって」

その後も彼女らしくもなくギャンギャン騒いでいたけれど、あまり耳には入って来ず、ただニヤニヤをおさめようとするので精一杯だった

Le-ca さんリクエストありがとうございます