恋人はママちゃん【白】 (ページ34)

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夜だし少しだけ厚着して地下駐車場に向かい車に乗り込む。

少ししてから帽子を目深に被りマスクをしたラウールが助手席に乗ってきた。

私の車は軽だからラウールはちょっと窮屈そう。

「まだ後ろの方が広いから後ろに座る？」

「え、Aさんの隣がいいから大丈夫」

そう言うから座席の移動はせず、ラウールがシートベルトをしたのを確認してから出発する。

「Aさんと出掛けるの初めてだから楽しみ」

「穴場だから多分見られたりはないと思うから大丈夫だよ」

ニコニコしながら言うラウールに夜は人気のない場所だから安心出来ると伝えれば、何故かラウールは苦笑いをした。

「Aさんて鈍感って言われない？」

「ん〜たまに言われてたかも？」

昔は空気読めない子って言われたりしたけど最近はそんな事ないはず、多分。

「ふ〜ん。あ、それより散歩するなら飲み物買わない？」

「通り道にコーヒーショップならあるからドライブスルーしようか」

ラウールが頷いたからコーヒーショップでドリンクを買って高台へと向かった。

駐車場に停めてコーヒーを持って降りようとしたら先にラウールに持って行かれた。

「荷物は男が持つものだからね」

マスク越しでも分かるドヤ顔に小さく笑ってから任せると伝えた。

「そこの階段を上がると高台があるんだ」

そう言って向かおうとしたらラウールに引き留められた。

「Aさん、夜道だし危ないかもしれないから手繋がない？」

夜道が不安なんて、まだまだラウールも子供なんだね。

少し恥ずかしそうにラウールの差し出す手を私は迷う事なく握る。

「じゃあ行こうか」

「うん」

かなり大きい手に包み込まれ、ちょっとだけドキっとしたけど何ともない振りをして階段を上がり始める。

途中に何個かある街頭の光を頼りにゆっくり階段を登る。

「ラウール大丈夫？」

「平気だよ、Aさんこそ大丈夫？」

「家政婦の体力舐めんな？」

ちょっと戯けて返せばラウールはいつもの笑いをしようとして夜なのを思い出して慌てて口を押さえた。

そんな仕草が可愛くてつい笑ってしまったら、ラウールはちょっと拗ねた表情をして私の手を引っ張りながら先を歩いた。