恋人はママちゃん【白】 (ページ29)

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「可愛いよね～本物みたいだし名前とか付けちゃう？」

「ええね、だてのハイヒールみたいなん洒落た名前にする？」

佐久間くん達はぬいぐるみを撫でながらママちゃんに話し掛ける。

でも俺はそこに交ざる気分では無くて、ただ皆を見つめていた。

「名前かぁ…」

ママちゃんは佐久間くん達の提案に少しだけ視線を上げて考え出した。

その時、ちらっとめめが俺の方を見て来た。

その目は何かイタズラを思いついた時みたいな、でも優しさも含んでいる。

めめは視線をママちゃんに移動させ、優しくぬいぐるみを撫でながら話しかけた。

「『マイト』なんてどう？」

「はぁ!?」

突然何言い出すの!?

思わず出た声にママちゃんが俺を見る。

でも次の瞬間には俺は佐久間くんと康二くんに部屋の隅に拉致られた。

「…何？」

俺めめに文句言いたいんだけど。

多分ムスっとしてる俺に佐久間くんと康二くんは小声で話し掛けてくる。

「あの様子と俺等の事調べて無いって言ってたから、ママちゃんはお前のフルネーム知らないんじゃない？」

「ならこれはチャンスやで？」

確かに…自己紹介した時も俺はラウールとしか名乗らなかった。

それを今寂しいと思ってしまったけど、取り敢えずは康二くんの気になる発言の意味を問いかける。

「チャンスって？」

俺も小声で聞けば２人はニヤリと笑った。

「このままぬいぐるみが『マイト』になれば、ママちゃんがお前じゃないけどその名前を呼ぶって事だぜ？」

ほら、と康二くんが顔でママちゃん達を指すからそちらを見ればめめが優しい笑顔でママちゃんを促していた。

「ほら、Aさんも呼んでみなよ」

む〜…何だよ、あの自然な笑顔イケメン過ぎて卑怯だよ。

「マイト」

そんな俺の嫉妬はママちゃんの呼び声に吹っ飛んだ。

え、何、家族に呼ばれた時と全然違う…っ。

ラウールって呼ばれた時はそこまでドキドキしないのに真都って呼ばれたら…勿論俺じゃなくぬいぐるみを呼んでるのは分かってるけどドキドキが止まらない。

そんな俺に佐久間くん達が優しい眼差しを向けてくる。