【忍たま】私は久々知くんが。【久々知兵助】

三郎くん ページ35

you side



鉢屋三郎くん。


彼とは同い年で、学生の頃は
学級委員長委員会で一緒だった。




『よいしょ。この間ぶりだねぇ』




中庭の木陰で見つけた彼の隣に腰を下ろした。




鉢屋「お疲れ、A。兵助は？」



『今日から出張。
あ、もしかして兵助に用事だった？』



鉢屋「Aに用事。……兵助はいないのか、好都合」




そう言って、三郎くんは私の頬を
ぷに、と突いた。




『私に？』



三郎「そうそう。
　 授業が終わったら、時間ある？」



『うん、今日は特に何もないよ』




生徒たちにも
たまにはゆっくりする時間をあげたくて、
課題も補習もなしにした。




鉢屋「良かった。じゃぁ待ってるから、
　 放課後一緒に出掛けよう」



『で、出掛けるの？』




まさかのお誘いに、つい驚いてしまった。




鉢屋「俺とじゃぁ嫌？」




『そんなことないよ。
　でも、私とお出掛けなんて……どうしたの』




鉢屋「……ずっとしたかったから」




『え？』




呟くように言った三郎くんはそれ以上何も言わずに、
また木陰でごろりと横になって目を閉じた。








授業終了の鐘が鳴る。




鉢屋「……あ、A」




中庭に来てみると、
さっきのまま変わらない様子の三郎くんがいた。




『さ、三郎くん。ずっと寝てたの？』



鉢屋「まさか。目を閉じて考えてたんだ」



『何を？……うわっ』




三郎くんが急に起き上がり、私の手を引いた。
その勢いで、私は三郎くんに寄り掛かる。




『ご、ごめっ……』



鉢屋「ふたりで、どこに行こうかなって」



『っ、』




耳元で囁かれ、心臓が飛び跳ねた。




『……わ、私、着替えてくるー！』



鉢屋「ぶっ！！」




三郎くんの顔をぐいっと押して、
私は逃げるように自室へと走った。




鉢屋「あはは。顔、真っ赤にして」




◆◇




『あーもう、びっくりした』




忍装束から小袖に着替える。


そういえば私、兵助以外の男の人と
あんなに近付くなんて初めてだ。

良い大人のくせして、
耐性のなさに自分で驚くくらい。




『……さて』




最後に髪をまとめて、私は部屋を出た。

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