【忍たま】私は久々知くんが。【久々知兵助】

この先のこと ページ23

久々知side



くのたまの実習も無事に終わって、
また俺とAはいつもどおりの生活をしている。


いつもどおりって、
思い通りに会えるわけじゃないし、
恋人同士いつも一緒ってわけにはいかないけれど、


学園内でAを見掛けるだけでも、幸せなのだ。




兵助「はぁ……久々」



『可愛い、兵助』




火薬類の用事で来た時には、
決まって火薬庫の奥でAを抱きしめた。

それだけでは足りないに決まっているので、
もちろん口付けも交わした。





◆◇




とある日、タカ丸さんがくのたまに追い掛けられているのを横目に、俺は食堂へ向かった。




兵助「またタカ丸さんが追い掛けられてるよ」




食堂へ入ると、A以外は誰もいない。

Aはとっておきの羊羹があるからと、
調理場で準備をしている途中だった。




『髪結目当てに加えて、
　お近付きになるチャンスだもん。
　本当、モテモテだね』




二人分の羊羹が乗った皿と、冷たい緑茶が入った
湯飲みを持って、Aは席に着く。




兵助「たしかに。Aは行かなくていいの？」



『そんなことより兵助と羊羹食べる方が大事。
　……それに、行くって言ったらどうするの？』



兵助「行かせるわけないよ」




Aの隣に座って、そっと口付けた。







『進路？』



兵助「うん。もう俺たちも五年生だしなって、
　 勘右衛門と話してたんだ」




甘い羊羹と渋めの緑茶を楽しんでいる。
Aはぺろりと完食だ。




『私はフリーで頑張りたいと思ってる』



兵助「……俺はまだ決められない。
　 どうすればAと一緒にいられるかって……」




それを占める割合が多いのだから。




『そんな、私のためとか駄目だよ？
　こ、心変わりしたって知らないんだから』




そう口では言いながら、
不安に揺れる瞳が俺を見つめる。




兵助「嫌だよ。俺はそんな、
　 今だけの気持ちで肌を合わせたりしない」




Aだから。
Aしかいらないと思うから。




『ど、どんだけまじめなのよ』



兵助「え！俺はずっと、
　 Aと一緒にいるつもりなんだけど」



『嬉しい……』




Aが涙を浮かべて微笑むから



そっと、




だけどぎゅっと、抱きしめた。

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