【ky】今度は愛していいですか【実況者】

story 24 〜past〜 ページ25

信じられなかった。



私は一次審査に受かり、全国各地から選ばれた志望者たちが集められる、東京で行われる最終審査でグランプリを受賞した。




特に高かったのは、演技の評価点。



ビジュアルはもっと可愛い子もたくさんいたからトップにはなれなかったけれど、女優志望ということもあって演技力が評価され、総合でグランプリを受賞した。



そのオーディションでグランプリを獲得した人は、売れるかどうかは別として事務所に所属することが確定する。




私は憧れの女優と名乗れるようになることが嬉しくて、両親よりも先に一番に応援してくれていたキヨくんに連絡した。



さすがに東京までは一緒に来れなかったから電話での連絡だったけれど、キヨくんは電話先で泣いて喜んでくれた。



それくらい、私自身はもちろん、キヨくんも嬉しいって思ってくれてた。





でも、その喜びは束の間だった。



私は"芸能界"を。"芸能人"を甘く見ていたことに気付かされた。





『28歳まで、恋愛禁止…ですか？』



事務所の担当の人が私の実家まで挨拶と所属の手続きに来てくれたとき、そう説明された。



「はい。事務所にもよりますが、うちは若い女の子は清純派の子が多いですし、Aちゃんも清純派で売り出すのが一番だと思ってます。

なので、28歳までは恋愛はしないで頂きたいんです。今彼氏とかいないですよね？」




芸能界に入るんだから当たり前でしょ？と言うように、彼氏がいない前提で尋ねられた。




キヨくんとも仲が良かった両親も同席していたけれど、何も言わずに私が答えるのを待ってくれていた。




そのとき、私がちゃんと"彼氏がいます"と言っていれば、もしかしたら清純派なんてレッテルを貼らない方針にしてもらえたかもしれないのに。




私は。





『―――いない、です』





大切なキヨくんの存在を、なかったことにした。





「良かった。では28歳までは先程申し上げた通り、恋愛はNGで。

それ以降は事務所側も大人の女性という扱いで、もし恋愛のスクープが出ても否定しない方針に変わりますので」



『わかりました』




キヨくんも女優という夢も両方大切ということを知っているからこそ、私の答えを待ってくれていた両親。



私の隣で両親が俯いていたのに、私は気が付かないフリをした。

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