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たぶんだけれど、たから島(もっと言えば記憶をゆっくりと失う一年)を通して、良くも悪くも彼に影響を与えたのだろう。
本土に戻ってから…そして再出港してからというもの、彼は忙しくしつつも、どことなく2人きりになるのを待っていたように感じていたから。
もしもこのガーネットから記憶が失われてしまったら…
私だったら、トラウマレベルに恐怖を覚えてしまう。
でも(心配とか不安からくるにせよ)こうもあからさまに距離を詰められてしまうと、これまでの時間を無に帰されるような気がして、あんまり嬉しくない。
焦らなくても、どこにも行かないのに。
ただ、それを加害者側である私が言葉にするのもおかしな気がして、押し黙ったまま動けないでいる。
すると、千空が先に折れてくれた。
「あー、俺が何考えてかっていうと」
彼の指は、ゆっくり私の髪をすく。
普段の千空に戻ったようにも思えたけれど、その声はいつもより一際優しく聞こえた。
「世界に飛び出した今、どっかの誰かが自力復活してる可能性があんだろ」
「…それは、まあ」
可能性は十分にある。
世界中に科学者は何千、何万といるのだから。
「もし、そういう奴らと敵対したとしたら、真っ先に狙われんのは俺だ」
敵対する理由が何であれ、私たちが科学王国と銘打ってる限り、頭である千空がいの一番に狙われるのは明白だ。
それが拘束であれ…殺害であれ。
「…縁起でもないね」
「つっても、俺もお前を地獄まで連れてくなんて約束しちまってるもんでな」
いざと言う時のためのあくまで知識共有だと、彼は念を押して、言葉を選ぶように一度口を閉じてから、ゆっくりそれを音にした。
「メデューサは、死んだ奴さえ生き返らせる可能性がある」
そして紡がれた言葉の意味を理解するのに、私はそう時間を必要としなかった。
だってそれは、実を言うと、私も考えに及んでいたからだ。
そこまで驚かずに、黙って彼の次の言葉を待つ私に、優しいガーネットは、何かの確信を持ったように細められた。
「やっぱA先生も考えついてやがったか」
手癖のように私の毛先を弄っていた彼の手が離れる。
困ったように項を搔くから、私は静かに視線を落とす。
「いつから考えてた？」
「…あなたが最初に司に首を折られた時」
「ずいぶん初っ端だな」
「……だって、あの時のあなたは」
確かに、息をしていなかったから。
続く言葉を音にできない。
脳裏に浮かぶ光を失ったガーネットを追い出すよう、首を振った。
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ゆき - 本当に面白くて何日かかけて一気に読んでしまいました！頑張ってください、応援してます!! (4月28日 7時) (
レス) @page21 id: 7eee3b5683 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 猫さん» コメントありがとうございます。最初からここまでかなりの量かと思いますが、完読していただけて嬉しいです。まだ先がありますが、最後までお付き合いしていただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。 (2月27日 8時) (レス) id: 90b12c249d (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - もう、最高です！！最初から一気読みしてきました。私の拙い語彙力で申し訳ないんですが…本当に大好きです！！この小説のおかげで知識が増えました！応援してます！ (2月24日 19時) (レス) @page16 id: 978b061538 (このIDを非表示/違反報告)
sora(プロフ) - 爪楊枝さん» コメントありがとうございます。こんな拙い文書ですが、読んでいただきとても嬉しいです。彼らがブレることのないよう細心の注意を払って書いていきますので、これからもよろしくお願いします。 (2月19日 20時) (レス) id: 90b12c249d (このIDを非表示/違反報告)
爪楊枝 - 更新ありがとうございます！毎話soraさんの文章のセンスに感動しています。物語の続きを楽しみに待っています！ (2月18日 23時) (レス) id: ee4a2d718e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sora
| 作成日時：2024年7月2日 12時
