空七日目 ページ7
「うわ、雨止んできちゃったし……！」
ぼそりと溢すと、目敏く飛んできた部活の先輩。よりによって、わたしが苦手な先輩だ。
「ね、雨止んできちゃったね！外練したくないよねぇ〜」
「あ、そうですね……はは」
困って苦笑いをするが、彼女には伝わらなかったらしい。
「そういえばわたしの好きな人がさぁ……」
始まった。わたしは密かにため息を着いた。
この先輩は自分の話しかしない上、少しでも適当に返そうものならすぐに機嫌が悪くなるのだ。
そこさえなければ普通の先輩なのだが、それがあるから苦手な先輩に降格するのである。
そして案の定止んでしまった雨のせいで私達は校庭を十周することとなり、踏んだり蹴ったりだと思わず落ち込んでしまった。
だが、ミニハードルで脚を鍛えている時だった。
「あ、見てあれ！」
同じ部活の子が大声を出し、後ろの空を指差す。
「え、何？」
くるりと振り返ると、
「……わ、」
そこには虹が架かっていた。
かなりくっきりとしていて、綺麗な弧を描き堂々と立っている。
滅多に見られないしっかりした虹に、その場にいた全員が目を奪われた。
「うっわ、すご！」
「しかもダブルレインボーじゃない？」
確かに言われてみれば、上に薄っすらともう一つ虹が見えるような気がする。
「ええ、写真撮りたい！」
「スマホ持ってきたいー」
口々に皆がスマホを持って来られないことを悔やむ。
ある子に至っては、自分の指をフィルターがわりに写真を撮る真似をしていた。
そんな中わたしはくすっと笑い、伸ばした手の隙間から溢れる光に目を細める。
「……何か、思ったより悪い日じゃないかも」
「どうしたのー？」
呟いた瞬間にひょこっと顔を出したのは、例の先輩だ。だけど。
「いえ、いいもの見れたなって！」
思わず口元が緩む。
今なら優しく接する事ができるかもしれない。
そんなことを考えながら、透き通った空に架かる虹を見つめて、わたしはそっと目を瞑った。
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ねこる。 - えるさん» コメントありがとうございます！わたしの小説で心が透明になるだなんて嬉しい限りです…。もっと色々な表現ができるよう頑張ります！ (2021年10月26日 7時) (
レス) id: b433a40741 (このIDを非表示/違反報告)
ねこる。 - まめふなさん» ありがとうございます！レス遅れてすみません…。お話素敵って言ってもらえて嬉しいです！頑張ってラストまで書きます！ (2021年10月26日 7時) (レス) id: b433a40741 (このIDを非表示/違反報告)
える - なんか単純に綺麗って言葉が出てきました。空の美しい描写、主人公さんたちの感情表現の書き方が綺麗だと思いました。このお話を読んでる間は心が透明になってる感じでした。作者様の書き方尊敬致します。 (2021年10月17日 7時) (レス) @page27 id: cbb903ca6b (このIDを非表示/違反報告)
ねこる。 - 丙ののののさん» コメントありがとうございます！空の描写はめちゃめちゃ時間かけたので、そう言ってもらえると嬉しいです…。今後も感激してもらえるよう頑張ります！ (2021年8月16日 8時) (レス) id: 035a026afe (このIDを非表示/違反報告)
丙のののの(プロフ) - 1話目を読み終えたところなのですが…これは…空の描写が美しすぎますね…！くどくないのに美しい情景が伝わる描写…占ツクで初めて見つけました。感激！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 4482ed7f20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねこる。 | 作成日時：2020年6月5日 8時
