＊ ページ3
「って、誰もいない..か...」
今日は、徹夜明けの人は誰も居ないみたい。
良かったぁ、みんなあれから帰れたんだね。
ふと、昨夜の嵐のような慌ただしさが蘇る。
「よーし、今日も頑張るぞ！」
スーツのジャケットを脱ぎ、片手にいつもの布巾ともう片方にはアルコールスプレーを手に取る。
皆のデスクを拭きあげる為に。
「うわっ、ベタベタするっ、」
日々の業務に加え、流動的に動くスケジュール。
皆とんでもなく忙しくて、清掃にかまっていられないのが現状。
「佐々木さん...もう！また食べカス..」
次々に皆のデスクを軽く拭いた後、
入り口付近の唯一の飾り棚に手をのばす。
ひっそりとこの広いフロアを見守るかの様に
置いてあるのは、ガラス細工が施された花瓶。
今朝自分が持ち込んだ花を手際良く生けながら満足感に浸る。この花の名は分からない。
ただ、スーパーでお安く売られていただけのお花。けれど青と薄いピンクの色が、可憐に華やいで素敵だ。
「こんなに綺麗なお花だけど...誰か見てくれてるのかな？」
すんっ..
生花特有の鮮烈なかぐわしさ。
あぁ、なんて甘いのかしら..
誰かの心が、少しでも和んでくれますように――
私の..今いるこの場で..
精一杯の..
思いやりと、真心を込めた行動を――
これには、私なりの理由がある。
ここ、エリート集団...警備企画課に何故か
配属され数年。今でも思う。何故、私が？
ちょっとだけ学問は得意だった。
けれど、ずば抜けた格闘術も特殊な技能も残念ながら持ち合わせていない。悔しいけれど..
せめて誰かを心配したり、気にしたり...
後はお掃除とか..こんな事くらい。
「いっけない、忘れちゃってた！」
私のバカバカ！
1番忘れちゃっ駄目な人。
そうあの人..
フロアの1番奥――
一箇所だけ異質な空間がある。
ダークブラウン系のパーテーションで区切られている場所。そっと覗くと、艶やかな黒のオフィスチェアが凛と鎮座。 この椅子の主は今はいないけれど、立派な肘掛けが彼の威厳を投影しているかの様。
降谷くん、ごめんね？
「わっ、珍しいなぁ...」
思わず、頬が緩んだ。
何故って、彼のデスクにコーヒーの茶色の跡。
完璧人間の降谷君にもこんな事あるんだね。
机上の隅に置かれた空の缶を掴み、拭きあげた。
降谷君のデスクだけ特に念入りに..
「随分..差がついちゃったなぁ、」
そう、最初は彼と隣のデスクだったのに..
それが、今じゃこの格差だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 681人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぷぅ(プロフ) - うわぁ、新人に降谷さんが好きですって言えなくて新人の恋愛に協力して下さいって言われたら私だったらこう言ったら｢何でですか？｣って理由を聞かれるだろうけど｢ごめん、無理｣って言っちゃうだろうなぁ(ノдヽ) (2019年11月7日 12時) (
レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - うわっめっちゃいい所で！更新待ってます！大好きです！ (2019年11月5日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - ヒロインが降谷さんの好きな人って分かったら婚約者(振られてるから元婚約者になるのかな？)きれいな顔をしておいて降谷さんにヒロインの事を幻滅させるような何かひどいいじめみたいな事して来そうで怖いから近づきたくない( ´-ω-) (2019年10月14日 12時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - うわぁ、好きな人が婚約者と話してる所を見るの嫌だし、その間に入るのも嫌だなぁ( T∀T)私なら仕事があるからとかって言って逃げちゃう( ＞Д＜；)でも降谷さんはヒロインを呼んでどうするんだろう？( ´△｀) (2019年10月14日 12時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - とっても素敵な文章と内容で、時間を忘れてずっと読んでいました！凄く続きが気になります！応援しています！ (2019年9月8日 9時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ポポロン | 作成日時：2019年6月15日 12時
