十四箇所目 ページ15
Aside
ルフィが眠りについたあと、あたしは毛布をかけながらふと昔のことを思い出していた。
「……」
思い出したって、戻れる訳じゃない。そんな事は分かってるのに、どうして人は過去を思い起こしてしまうのだろう。
「ルフィ、寝てるよね……少しだけいいか」
どうしようもない気持ちをどうにかしたくて、あたしはそっとマスクを外し、割烹着と帽子を脱ぐ。髪がゆるりと肩を滑り、風に揺られる。夜に髪を下ろすのは久しぶりだ。
「気持ちいい風……」
目を閉じて風を感じていると、不思議とさっきまでの感情が静かに消えていく。
「……何の用だ」
目を閉じたまま、あたしは微かに音のする方へ向かって言い放つ。風に合わせて微かに波の打つ音が聞こえる。
そっと目を開けると、そこには口を大きく開いたウツボのような生き物がいた。腹を空かせているのか、今にも船ごと飲み込む勢いだ。
「……悪いね、あたしは大事なものを汚されるのは一番許せないんだ」
そう声をかけてから、あたしはルフィが眠っていることを再確認してから、覇王色の覇気を発動した。
「あたしの大事なものにはもう二度と手を出さないようにね」
完全に怯えきっている生き物にそういうと、そそくさとその場を後にした。また割烹着と帽子を身につけ、マスクをするとルフィの方に目をやる。寝相が悪いのか毛布が端っこに追いやられている。本当に手間のかかる船長だ、そう思い毛布をかけ直してやると、急に手を引かれそのまま抱き締められた。
「え、ちょっ……ルフィ？」
起きているのかと焦ったが、どうやら完全に寝惚けているようだ。それにしてはかなり強い力で抱き締められているが、どこか懐かしい気持ちになった。
「おはようAさ……って大丈夫か？」
「見ての通りずっとこの状態のままなんだよ」
あたしは何時もより憂鬱な気持ちで朝を迎えた。それもそのはず、昨日ルフィに抱き締められたまま動けないからだ。そのせいで日課である掃除も出来ず、ただぼーっとするしかない状態が続いている。
「おいルフィ！ Aさんが困ってるだろ、離せ！」
「……むにゃむにゃ」
「ダメだ、こいつとんでもねえ力だ……」
「ありがとうサンジ、どうせ腹が減ったら勝手に起きるだろうからこのままにしておくよ」
それにしても、寝ているはずなのにこれだけの馬鹿力があるなんてね。もしかしたら夢の中で巨大な肉にでもしがみついてるんじゃないかな。
「ふふ、まあ後少し寝かせてやるか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1633人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポプリん(プロフ) - 翠さん» 翠様、コメント下さりありがとうございます！ 身に余るお言葉の数々、痛み入ります。本当にありがとうございます！ 次回は短編に挑みたいと考えておりますので、是非また楽しんでいただけたらと思います！ (2023年3月28日 8時) (
レス) id: 7e262a9db9 (このIDを非表示/違反報告)
ポプリん(プロフ) - まおさん» まお様、コメント下さりありがとうございます！ 応援までしていただけて本当に嬉しいです！ 素敵なアイデアありがとうございます♪シチュ溜めをして短編にしようと思うので、他にもアイデアあれば是非教えてください！ (2023年3月28日 8時) (レス) id: 7e262a9db9 (このIDを非表示/違反報告)
ポプリん(プロフ) - きてぃーさん» きてぃー様、コメント下さりありがとうございます！ 遂に完結させることが出来ました、応援して下さり本当にありがとうございました！ (2023年3月28日 8時) (レス) id: 7e262a9db9 (このIDを非表示/違反報告)
翠(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても素敵なお話で前から応援させていただいていました。とても好きな作品でした。お疲れ様でした。 (2023年3月27日 13時) (レス) @page50 id: 090a3776e1 (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！イチャイチャや嫉妬する姿見てみたいです（ ; ; ）🌟 (2023年3月27日 3時) (レス) @page50 id: 2c8060619c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ポプリん | 作成日時：2022年8月14日 18時
