【占ツク】人気作者の光と影

6 ページ7

.

【視点：麗鎖】

　私は高評価としおりが増えていく新作の夢小説を見ながら口角を上げる。

　荒らしが来たことにより、信者は対抗すべくこぞって10評価を入れてくれた。援護コメントをしてくれた信者のボードを見に行くと友達にも10評価を入れるように呼び掛けていたらしい。

　荒らされていると聞いたらたいていのユーザーは気になって見に行くか、同情して高評価を入れるかはするだろう。

　短期間で何度も高評価が入ることにより、オリジナルのランキングには載らなくとも関連作品ランキングや注目作品には表示されるようになる。
　こうしている間にもランクインの通知が届いた。

――そう、ただマーケティングしているだけでは足りないのだ。こうした荒らしなどの話題も、短期間での人気獲得には必要なのだ。


「もう夜遅いから寝なさい」

　ドアを挟んで母親の声が聞こえてきた。部屋のドアには磨りガラスがあるので、明かりをつけていればすぐにわかる。

「はーい」

　今日は金曜日だ。どうせ夜遅くに起きているユーザーも多くはないし、続きは明日にしよう。

　私はパソコンをシャットダウンして部屋の明かりを消した。


　翌日。私はお昼くらいを見計らって占ツクにログインする。この時間は活動しているユーザーが多い。

　パソコンで占ツクを開いたまま、今度はスマホから占ツクにアクセスした。そこで私は「遅待ちゃん」の夢小説を漁る。

　条件は初心者または無名作者であること、評価が少ないこと、しおりが少ないこと。

　いくつか条件に合う作品を見つけた。
　「初めての作品なので緊張してます」とか「初心者なので変なとこあるかもですが見てってください」とか「初めてですがコメント、評価待ってます」のようにいかにも占ツク初心者といった感じでピッタリだ。

　そのうちの一つ、『隣で待つ私。』という題名の夢小説にスマホのままコメントを入力して送信する。昨日使っていた名前は変えておこう。


鷹梟 - ヘッタクソすぎｗｗ初心者のくせに評価もらえると思ってんの？ｗマジうけるんですけどｗｗ (レス) id: 02kn533jth (このIDを非表示/違反報告)


　送信したあと1評価もしておいた。

　このまま10分くらい待とう。私は鋭い視線を画面に向けながらも、口許は裂けそうなほどに笑っていた。

7→←5

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す