loss of memory 阿部恋シリーズ (ページ26)

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『…私退院できるって言われたんです。退院した方がいいのはわかってるのに、ここから出るのが怖くて…知らないことに触れるのが不安なんです』

｢…そっか。怖いよね。知らない所にいかなきゃ行けないなんて。でも、大丈夫…Aちゃんが思ってるようなことはなんにも起こらないから…誰もAちゃんのことは嫌ってないしむしろ会いたがってるんだよ｣

『本当ですか？私はみんなに嫌われてたってわかってるから…』

｢…そんな事ないよ。Aちゃんはいっぱい頑張ってたんだよ1人で。今はそんなこと思ってる人なんていない。もし居たら俺が守ってあげるから｣

不安でシーツをぎゅっと握っていた手を、優しく包み込む阿部さんの大きな手。

温かくて触れてるだけでなんだか安心する気がした。

『…本当に？』

｢うん。本当にAちゃんの事俺が守るから｣

優しい言葉で安心してくるも、私が退院したら阿部さんに会えなくなる不安が今度は襲ってきた。

『でも、私が退院したら阿部さんに会えなくなる』

｢…そしたら俺が会いに行く今まで通りAちゃんの所行くから安心して｣

『…』

｢Aちゃんはなんにも不安になる必要はないよ。無理にとは言わないけど…もし進むんだったら俺がそばにいるから｣

なんでだろう。

なんで、こんなに阿部さんがいるだけで安心した気持ちになるのか、不思議で仕方がない。

阿部さんがそばにいたらなんでも出来る気がして、怖いものが無くなる気がする。

｢俺はずっと待ってるから｣

ぎゅっと強く握られた手。

なんでそんなに強く握られたんだろう。