夏の終わり ページ29
『亮平くんこれ買わない？』
コンビニで見つけた値引きシールが付けられた線香花火。
｢花火？いいね買おっか｣
指で指していた、花火を取りレジを通す。
｢どっかでやろう｣
『うん！』
1度亮平くんの家に行き、花火をやる準備をしてまた2人で出かける。
少し歩くと、小さな人気のない公園に。
バケツに水を汲み、花火をする準備をし2人する。
｢危ないから俺やるよ｣
私の手の中のライターを、取りカチッと火をつけてくれた。
2人で、線香花火の先に火をつけてパチパチと小さく弾ける花火の先端を見つめる。
『…綺麗だね』
｢うん｣
じーっと見ていたらポトッと私の線香花火の火種が落ちてしまった。
顔を上げると、まだ亮平くんの線香花火は火花を散らしていて、そんな線香花火に夢中な亮平くん。
ポケットから、スマホを取り出し立ち上がり少し遠くから亮平くんの写真を撮る。
シャッター音には気づかないことをいいことに私は何枚も亮平くんの写真を取り続けた。
｢あ。終わっちゃった。Aちゃんまだあるよ｣
線香花火を受け取り火をつけて、火花が散るのを眺めていると少し肌寒い風が吹く。
その風は、なんだか夏の終わりを告げるような冷たい風。
線香花火とは似合わない風だった。
｢さむっ…夏終わっちゃうね…｣
『そうだね…なんかちょっと寂しいかも…』
なんでだろうか。
今までで過ごしてきた夏の中で1番楽しかったからなのかな。
思い出に残る夏だったから寂しいのか。
線香花火を見つめながら、夏の思い出を少し振り返っているとポトッと火種が地面に落ちた。
｢そんな寂しがらないの…また、来年も一緒に夏過ごそ？｣
『うん』
そうだったね。
また、来年も亮平くんと過ごす夏があるから別に、寂しがる必要なんてないんだ。
｢ほら、線香花火まだあるよ。今日やらないと捨てることになるからやっちゃおう｣
渡された線香花火を受け取り、2人並んで残りの線香花火を静かに楽しんだ。
今年の夏の思い出として。
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作者名：ぽぽ
| 作成日時：2021年9月12日 12時
