【完】梅 と 松【梅原裕一郎】

会話のテンポ ページ4

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ラジオの収録前、こないだ行った親戚の結婚式の写真が送られてきた。花嫁も花婿も幸せそう。まあ幸せか、結婚式するくらいだし。

「ねー、梅ちゃんはさ、結婚式とかしないの？」
「は？何急に」
「なんとなく。ずっと気になってて！」

タイムリーな話題が出てきたから少しびっくりしてしまった。

「Aは別にいいかなって言ってた」
「そうなんだ。てっきりAはしたいのかと思ってた」
「あんまりそういう話しないから分からん」
「普段どんな話してるの？」
「んー…なんだろうな」

今朝は『最近化粧ノリが良くて嬉しい』、『今日の私可愛い』みたいなことを永遠と言ってた。
さっきすれ違ったときは『お腹空いた』って言って現場に向かってた。

「ちゃんとした会話してない！」
「会話しなくても伝わってるから」
「ふぅん。夫婦っぽい。熟年の」
「新婚なんだけど一応」
「新婚感ないよね2人とも」

言われてみれば確かにそう。結婚式はしてないし、新婚旅行にも行ってない。そんなことしなくても幸せだから。

「僕も二人と暮らしたいな」
「絶対に嫌だ」
「妄想じゃん！三人で川の字で寝たいね」
「俺が真ん中で？」
「なんでそうなるの。Aが真ん中じゃないと許さないよ〜」
「絶対に無理」

今夜はちゃんとAと会話しようと思った。
いつもしてるけど。

家に帰るとAは風呂上がりだったらしく、フェイスパックをしていた。

『おかえり！お疲れ様！』
「ただいま」

パックをしてるせいで全然喋らない。タイミング悪かったな。なんて思っていたら終わったらしく『すっきり〜』と言ってパックをゴミ箱に捨てた。

『見て、ツルツル』
「うん」
『これ以上可愛くなったら困るね』
「何言ってんだ」
『可愛いって言って！』
「風呂入る」
『ねえ〜』

全然会話成立しなかった。なんでこうなるんだ。
けどよく考えたら毎日こういうやり取りしてる気がする。
風呂から戻って来たらAは歌いながら足をマッサージしていた。

『おかえり〜』
「ただいま。浮腫んでんの？」
『うん。なのでマッサージしてまーす』
「貸してみ、足」
『え！マッサージしてくれるの！』
「うん」
『最高かよ〜！ありがとう！うめ、愛してるよ！』
「うるさ。てかほっそい足だな」
『美脚と言ってくださる？』
「痛くするぞ」
『ごめんなさーい。あ、今日ね〜』

普通マッサージ店なら逆だろ、というくらい揉まれてる側が喋っていた。あれ、思ったより会話してるな。ほぼ内容無いけど。

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