ヨシキの憂鬱 ページ33
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梅とAが付き合い始めたらしい。まだ二人に会ったわけじゃないけど連絡が来た。
今日はAと同じ現場だから問い詰めようと思う。
『おはようございまーす。あ、ヨシキくんおはよう』
「おはよ」
『眠そうだね』
「昨日わりと早く寝たんだけどね」
そういうお前も眠そうだけどなと思いつつ、雑談をしながら台本チェックをした。
収録は順調に進んで予定通りに終わった。この後事務所に寄って帰るというから、俺も一緒に向かった。
その途中、梅に会った。向かい側から歩いてくるのが見えたから少し意地悪してやろうかな。
「A、相変わらずチビだな」
『いきなりなに…!?』
「ほら縮みそう。縮め」
『いてててっ!押さえないで押さえないで!』
「何してんの」
Aとじゃれてたらいつの間にか目の前にきてた。
今までなら一緒にいじったりしてたけど、なんだか冷静に言われてしまったのでやっぱり彼氏になると違うな、と。
『ヨシキくんがいじめてくる』
「いじめてねえし」
『いや、あれはいじめてた』
「いじめてませーん」
「いやもういいから。A、」
『はい…』
「…なんでもない。じゃあ」
『え…ちょっと待っ…』
想像では「気安く触られてんじゃねえ」とか「誰の彼女か分かってる?」みたいなことが起こると思ってたんだけど。まさか怒って去っていくとは。
『どうしよう…怒らせた…』
「なんかごめん」
『ほんとに何してるんだろ…』
今にも泣きそうな顔をしているA。普通の恋人同士なら、あんなことで怒るな!とか、あとで謝ればいっか!ってなると思う。けど、二人は違ったみたい。
『ごめん、事務所先に行ってて』
「え、は?」
『ほんとごめん』
そう言って、梅が歩いた方向へ走って行った。
やっぱり梅には勝てない、そう思った。
わざわざちょっかい出してこんなことになるんなら、初めからしなけりゃ良かった。
二人がどうなったのか気になるから、こっそり後を付けたら、廊下の角を曲がったところで二人が抱き締め合ってるのが目に入った。
何を話してるか聞こえないけど、梅の手がAの頭を撫でたのを見て、見るに堪えない謎の感情が襲いかかってきた。
もう無理だと思って来た道を引き返して、外に出た。
事務所になんて寄る気になれなくて、真っ直ぐ帰った。
自分はこんなにもAのことが好きだったんだって改めて感じた。せめて気持ちを伝えられてたら、こんなモヤモヤせずに済んだかもしれない。
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ばんそうこう(プロフ) - p@n@さん» なるほど…!ラジオで公表する前のお話だったのですね。返信ありがとうございます!引き続き応援しております! (2021年1月4日 0時) (レス) id: 61bb474ff8 (このIDを非表示/違反報告)
p@n@(プロフ) - ばんそうこうさん» コメントありがとうございます!ややこしてすみません。ラジオで発表したあとにTwitterで公表していますが彼はその放送前に知ったような流れです。近く修正しようと思います! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 82332159e0 (このIDを非表示/違反報告)
ばんそうこう(プロフ) - 楽しく読ませていただいております!29ページのTwitterでたろりは二人が付き合っていることを把握している様子なのですが、31ページでは初めて知ったような描写がありますが…時系列について混乱してしまいました。読み落とし等ございましたら申し訳ございません! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 61bb474ff8 (このIDを非表示/違反報告)
p@n@(プロフ) - スーさん。さん» あ、あ、ありがとうございます……!とても嬉しいです。これからも頑張ります! (2020年8月2日 2時) (レス) id: 82332159e0 (このIDを非表示/違反報告)
スーさん。(プロフ) - は、は、初めまして…!いつも楽しく読ませて頂いてます…!読む度に胸キュンが止まなくて、心臓何個あっても足んないです…(昇天) 更新頑張ってください!!楽しみ&応援してます!!! (2020年7月31日 1時) (レス) id: 1959e07ea8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:p@n@ | 作成日時:2020年7月25日 10時