梅 と 松【梅原裕一郎】

満開 ページ16

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久しぶりに梅ちゃんが泊まりに来た。少し散らかってるのを見られたけどあまり気にしない。
それぞれお風呂に入って、あとは寝るだけになった。

つけっぱなしにしていたテレビではトレンドニュースがやっていて世間の人達はお花見をしてるらしい。

『へえ〜お花見いいね』
「桜なんてその辺に咲いてるの見れたら充分」
『こないだTwitterに写真載せてたじゃん』
「深い意味はないよ」

まぁ、そうだろうなぁと思いつつTwitterで流れてくる桜の写真を見ていた。そしたらパッとスマホを取られて勝手にスクロールして「そんなに見たいの？」と聞かれた。

『うん。見たい。別に座って眺めたりしなくていいからゆっくり桜がある所を歩けるだけで満足』
「ふーん。じゃあ見に行く？」
『何を？』
「桜に決まってんじゃん。このタイミングで映画なわけないでしょ」
『そうだけど。今から行くの？』
「うん。近くにあるじゃん。木が」
『あれ桜の木なの？』
「多分。知らないけど」

夜中だから誰もいないだろと言って、私ん家に置きっぱなしにしてた薄手のパーカーを引っ張り出した。ほんとに行くつもりだ。
私もカーディガンを取り出して羽織った。
そして何故かお揃いで買ったサンダルを履いた。
鍵とスマホだけ持って外に出ると案の定少し寒かった。

梅ちゃんが言ってた場所には、その通り桜の木が並んでいて満開だった。
夜の光に照らされてる桜はとても綺麗で見とれてしまった。

『ほんとに咲いてた！すごい！』
「でしょ。綺麗だな」
『ね、綺麗！』

写真を撮ったり、落ちてる花びらを拾ってみたり。
なんだか子どもに戻った気分。
ある程度歩いてると誰もいない道にテンションがあがってしまった。

『なんか楽しくなっちゃった』
「転ぶなよ、鈍臭いんだから」
『分かってるよー、ふふ。あっ、やば』

低めの段差に引っかかって転びそうになった。
短パンだからコケたら絶対痛い！と思ってたら、後ろから手を引っ張られて間一髪、回避出来た。もちろん手を引っ張ってくれたのは梅ちゃんである。

「だから言ったじゃん。危ないな」
『ごめん…ありがとう…』
「ちゃんと歩けよ。大人だろ」
『はい…ごめんなさい…』
「ほら行くぞ」
『はい…あ、まって一緒に写真撮ろ』
「呑気かよ」

呑気でもなんでもいい。二人で桜を見ながら歩けたことが私の1番の幸せだからそれを残しておきたかった。
引っ張られた手はいつの間にか繋がれていて、そのまま手を繋いで帰った。

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