其の弐佰参拾漆 無限列車編34 ページ37
この状態で続けるのは苦しいし、痛みもあるだろう。
炭治郎の
その様子を杏寿郎と桜は静かに見守っていた。
「血管がある。破れた血管だ。もっと集中しろ」
炭治郎の瞳は杏寿郎も桜の姿も映さず、空一点を見つめている。
その時だった。
ついに炭治郎が血管の破れを見つけ出した。
「そこだ!止血、出血を止めろ」
顔を歪め歯を喰い縛り、炭治郎は腹に力を込める。
あと少し。
杏寿郎は最後の手助けと、炭治郎の額の真ん中に人差し指をトンと当てた。
「集中!」
力を振り絞り息を止め炭治郎は自らの呼吸法で止血を成功させた。
静寂の中で炭治郎の荒い息づかいだけが聞こえる。
「うむ。止血できたな」
「表面の傷だけ治します」
桜は腹部の刺し傷に手をかざし、治癒を始めた。
温かいもので傷口が包み込まれたと思うと、不思議と痛みが和らぐ。
直に触れていないのに、まるで桜に触れられているみたいで、とにかく心地よかった。
炭治郎は治癒に集中する桜の顔をジッと見つめた。
「竈門少年、呼吸を極めれば様々なことができるようになる。なんでもできるわけではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる」
「……がんばります」
呼吸を極めて強い自分に。
そうなりたい。
そうすれば、彼女を守れる男になれるだろうか。
強靭な力を持つ杏寿郎や義勇に近付くことができるのだろうか。
「はい、終わりました。ただ、失った血液は戻っていません。傷も表面を塞いだだけなのでジッとしていれば治りは早いと思います。動くと傷口が広がる可能性もあるので隠が到着するまで動かないでくださいね」
「……はい」
強くなりたいと思うが今の状態では当分なれっこない。
程遠い姿だ。
もっともっと努力と経験を積まなければ。
炭治郎は気落ちしながら大人しく返事をするのだった。
「桜、俺は一度列車に戻る。君は竈門少年の傍にいてくれ」
「はい」
立ち上がろうとした杏寿郎は、何かの強い気を感じ取り背後を横目で睨み付け、すぐさま桜と炭治郎を背に隠すように羽織を翻し鯉口を切ると柄を握った。
その直後、前方で爆音と地鳴りが起き、その衝撃で砂ぼこりが舞い上がる。
霧が晴れるように、その砂ぼこりの中から全身に入れ墨が入ったような肉体に赤い短髪をした青年が姿を現した。
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桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» だいぶ放置ですみません!国家資格目指してるんですね。すごいです!私も陰ながら応援しています。もう、あまり需要もないかとは思いますが私はまだまだ鬼滅の刃が好きなのでボチボ頑張って更新していこうと思います。お時間あれば、また遊びにきてくださいね。 (2022年1月10日 11時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 資格取ろうと思っているんだな!俺も国家資格を取ろうと思っている!お互い!勉強!集中!煉獄杏寿郎だ! (2021年10月31日 20時) (レス) @page50 id: e9e5935c56 (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» レスと更新が遅くなって申し訳ありません(T ^ T)しばらくこのような状態が続くと思われます。忘れた頃に更新かもしれませんが、引き続き彼らの応援よろしくお願いします( ^∀^) (2021年10月31日 15時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 煉獄さん!頑張れ!俺、煉獄さんを応援します!煉獄さんは強い‥!俺は弱者じゃない!夢主さんもだ!勝手に決めつけるな!猗窩座…!!お前を絶対許さない!竈門炭治郎です!煉獄さん、夢主さん!頑張って下さい! (2021年10月10日 19時) (レス) @page46 id: 2a3c5f3e4e (このIDを非表示/違反報告)
桜花(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» 全て言ってしまうとネタバレになってしまうので、あらかた伏せてになるのですが……^^;柱救済で物語を展開していきますので現役引退はありません!とだけ(^-^) (2021年10月4日 21時) (レス) id: 16cf354de0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜花 | 作成日時:2021年9月19日 10時