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Case89 ページ8

あまりにも暗い。

暗くて、寒い。

そして、

ただただ落ちていくこの感覚に、心臓が潰されそうだ。





『………ひっ…』



ヒュッ…と心臓のしたらへんが変に浮遊した感覚と共に、私の瞼は挙がった。

見慣れた天井。

眠り慣れたベッド。

チラリと横を見れば、そこも見慣れた私の部屋だった。


(あれ……なんで、部屋に……)


記憶が確かであれば、

私は病院へ行こうと重たい体を引きずって玄関に向かったはず。

そこからの記憶はない。


(自力で戻った……?)


そうとしか考えられない。



現状を把握すべく、布団から出るがうまく立ち上がれない。

床に膝をつき、ノロノロとリビングにつながる引き戸に手をかけた。

しかしそれは、自分の力ではなく、なにか違うものによって開け放たれた。


「うわっ。なんて格好してるんですか」

『へ………あ、あむろさ…ん……?』


なぜ彼がここにいる?

どうやって入った?

ぐるぐると疑問が頭を駆け巡るせいでなんだかめまいがしてきた。



「大人しくベッドで寝てください……よっと」

『え、あ!?』



軽々しくとはまさにこのこと。

いとも簡単に私を横抱きにした安室さんは寝室へと足を踏み入れ、私をベッドに降ろす。



『な、なんで…』

「…」



そう聞けば、なぜか彼はムスッとした顔でこちらを睨む。

え、なんで。




「鍵」

『………鍵?』

「部屋の鍵、開いてましたけど」

『あんらまぁ……』



どうやら病院へ行こうと部屋の鍵を開けたまでは良かったが、そこで力がつきたらしい。



「僕の言ったこと、覚えてますかね?」

『………いやぁ………ちょっと…』

「Aさん」

『危機感が足りないって言われましたすみません』



あまりにも低い声で名前を呼ばれるもんだからそりゃあスルーなんてできるはずもない。

怖い。安室さんが怖い。



「熱で弱ってる貴方の所に、もし強盗でも来たら…………………え…」

『すみません…………ん?』


なぜか安室さんはこちらをギョッとした顔で見ていた。


『……安室さん?』

「…ごめん」



安室さんは腕を伸ばし、私の目元を親指でグイッと拭き取った。

汗でもかいていたのだろうか。



『なんで、謝って…』

「君が、泣いてるから…」

『は?』


自分のことなのにわからなかった。

咄嗟に目元に手を持っていけば、確かに目元は濡れていて、

それに気がついた途端に、

ドバァッと涙が溢れだした。

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ユナ@前垢消えた(プロフ) - 最高すぎて一気読みしちゃったでし、、、、、更新待ってます!!!!!!! (6月25日 8時) (レス) @page26 id: 0fb864c8c1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴかそ - 初めまして!面白くて2日で一気読みしちゃいました!!私のスマホ終わりって表示されてますけど嘘ですよね!?続きが気になりすぎてハゲそうです、、、!いつか続き見れたら嬉しいなぁ〜、、、!! (2023年4月11日 16時) (レス) @page26 id: 515339af0b (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - 続きが気になります!体調を崩さずに! (2022年12月23日 0時) (レス) id: 8331d59edc (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 続きが気になり過ぎます!!続きが更新される日を心待ちにしています!! (2022年7月16日 3時) (レス) @page26 id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - ああああもう最高です。。。😭安室さんかっこいい。。。 (2022年4月30日 8時) (レス) @page26 id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヤギとポン酢 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/gen.php/novel/  
作成日時:2018年9月7日 17時

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