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「ありがとー」
ここのお茶は、甘くない。それが好きだった。
 甘いものは好きだ。けど甘いお茶は、好みじゃない。紅茶はストレート、コーヒーならブラック、みたいな。
 僕の住んでいた地域は、その2つが主流で、それ以外はあんまり見かけなかった。それだけに、ハーブティーは目新しくて、気に入った。ただどうしても、自分では上手く淹れられなくて、それが悩みだった。
 だからこそのお気に入り。
 余計なものを入れないお茶は、澄んでいて、茶葉の色を残している。それは美しく光を通し、反射し、屈折して、心を離さない。飲むのがもったいない。
 しかし熱いお茶が好きだった。まだ口をつけていなかったカップに、いま唇を当てた。
「…おいしい」
鼻をくすぐっていた香りが、口の中に広がって、満たした。
 そんな、丁寧に淹れられたここのお茶は久しぶりで、たまらなく楽しみだった。きっと、淹れ方はジェイドに教え込まれているんだろう。
「どうですか」
「また腕を上げたでしょ」
いつのまにかそばに来ていた彼に、そうこたえる。
「ふふ、お褒めいただけるとは…光栄です」
謙遜の言葉が似合わないやつだ。そう思ったのは、心にしまった。


 いつのまにか時間が経っていたようで、店内にはもう僕しかいなかった。
 ちょっと居すぎたなぁと反省して、僕も席を立った。アズールが対応してくれた。
「お会計は、サービス分を引いてこれだけですね」
「…次からは正規料金かー」
「手伝っていただいた分の元はとりましたかね」
元をとるとか、客の前で言うかね。…まあそれだけ信用されているととれば、いいことかもしれないが。
 元をとる、かぁ。
 …いい事を、思いついた。これは名案かもしれない。
「ねぇアズール、僕を雇ってくれないかな?」
「…と言いますと?」
「週1か2でアルバイトさせてほしいんだ」
なーんか警戒されてるな。そんなことでは無いのに。
「僕さぁ、ヒマなんだよね。だからここで卒業まで働けたらなーって思って」
ウィンウィンでしょと笑うと、彼の方も笑みを返してきた。
「そういうことなら、かまいませんよ」
「契約完了ってことで」
そんな話をしていると、後ろからリーチ兄弟が出てきた。
「え、アロワナくんここでバイトすんのぉ?」
「うん」
「まじ?じゃあいろいろ教えてあげる」
フロイドがすぐに肩を組んできた。…お前の方が背が高いって分かるからやめてくれ。
「そうですね、お茶の淹れ方もお教えしましょう」
それは普通にありがたい。

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しあ(プロフ) - 雪華さん» コメントありがとうございます。最近ですと呪術廻戦ですかね。 (2021年3月5日 21時) (レス) id: 46cd819be0 (このIDを非表示/違反報告)
雪華 - 高評価しました!知ってるアニメは何ですか? (2021年3月5日 21時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しあ | 作成日時:2021年2月28日 20時

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