各々の成長 ページ35
「じゃあ、行ってくるから」
「うん、いってらっしゃい(笑)」
バンビがここへ来て数週間が経った
初めの内は何も...と言うより
お風呂でさえ一人で入れなかったバンビも
今では料理以外の家事なら一通りできるまでに成長した
特に教えた訳ではない
家にいる時は四六時中私の後を付いて回るから
自然と覚えたのだ
ただ料理に関しては、やはり火が怖いのか
あまり手を出そうとしない
その代わり、後片付けとか配膳とか
出来る事は手伝ってくれるから、こっちとしては嬉しい限り
だって帰ったら
洗濯もお風呂掃除も終わってるんだよ？
「...なんか多田さん、最近様子が変じゃない？ここの所いつも定時で上がるし、彼氏でも出来たのかしら」
「えー、まさかぁ」
「そうよねぇ
あの多田さんに限ってねぇ」
だから楢崎さんにいくら噂されようと
腹も立たないしもはやどうでもいい
「あら"もう"帰るの？」
「お先、失礼します」
「...お疲れ様」
強いて言うなら"可哀想な人"、そう思うだけ
.
「ただいまぁ」
「おかえりなさい(笑)」
そして何より
帰りを待っていてくれる人がいるのは
やはり素直に嬉しい
「すぐにご飯作るから」
「うん！(笑)」
お腹が空いていたのか
嬉しそうに頷いて後を付いてくるバンビ
「お昼足りたー？」
壁に掛けてあるエプロンを付けながらシンクに立つと
「うん、美味しかった。
Aのおにぎり大好き(笑)」
バンビがピッタリ横につく
「それは良かった(笑)」
蛍光灯に照らされた
古くほの暗いステンレスシンクの台所
「あ、今日も貰ったよ？野菜」
「今日も貰ったの？」
「うん、ほら」
バンビの言う通り
ダイニングテーブルの上には
ざるに入ったチンゲン菜や人参などの秋野菜
「今日も手伝ったんだ？畑仕事」
「うん」
やはり日中暇をもて余しているのか
最近、よく向かいの
そのばあちゃんの家へ手伝いに行くバンビ
私が小さい頃は息子夫婦も一緒に住んでいて
そこの同い年の一人息子とよく遊んでいた
でも小学校へ上がる前にどこかへ引っ越してそれっきり
旦那さんは既に他界していたのでそれからずっと独り暮らしだ
どうやらお嫁さんとの折り合いが悪かったらしい
悪い人ではないんだけど...
「ねぇA、"ヒモ"って 何？」
「...は？ヒモ？」
"ヒモ"って言った？今
「うん」
キャベツを刻んでいた手を止め隣を見ると
バンビがキョトンとした顔でこっちを見ていた
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ami(プロフ) - まこさん» まこさん、夏目漱石のエピソード、素敵ですよね。流石偉人は違います。妄想当初はもっとムードある流れで使おうかと思ったのですが、気付いたらこんな感じに(笑)拾って頂けて嬉しかったです！ありがとうございます。引き続きお付き合い下さいね。 (2021年7月14日 17時) (
レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
まこ(プロフ) - amiさん！更新ありがとうございます。まさか。ここで大好きな夏目漱石の訳に会えるなんて泣素敵ー！これからも楽しみにしています。 (2021年7月14日 16時) (レス) id: c043fdfdb9 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - tamaさん» tamaさん、切なさ感じて頂けて嬉しいです。バンビはどこへ行ってしまったのか。今後の更新で明らかにしていきますね。お話に共感して下さり励みになります。 (2021年7月6日 15時) (レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - 切ない…バンビどこ行っちゃったのかな。 (2021年7月6日 0時) (レス) id: 2b3dad8b2a (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - 千衣さん» 千衣さん、それはもう「人にあらず」でしょうか(笑)悪の経典は観てないですが。←更新楽しみにして下さって励みになります！ありがとうございます。 (2021年7月5日 22時) (レス) id: abcc065ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ami
| 作成日時：2018年1月16日 1時
