深愛48 ページ48
「A...
もう一度俺と、やり直さないか」
跪いて涙拭う先生が、そう言った
空いている右手で私の手を握り
その甲を繰り返し親指で撫でる
「もう、Aを不安にさせるような事は
しないから」
「でも私まだ、全然成長出来てなくて...」
繰り返すのが怖い、正直に言うと
思わず口を噤んだ私に
先生は目を伏せしばらく黙って
撫でていた手の甲から視線を私に向けると
再び口を開いた
「それって、俺と一緒じゃ出来ない？」
「え...」
「俺と一緒に成長していくじゃ、ダメ？」
先生と、一緒に...
そんな事、考えてもみなかった
いつか成長した自分が、先生の隣にいる
そんな事を密かに願ってはいたけれど
先生相手では、夢のまた夢で
私からしたら、先生は大分大人で
完璧とすら、思っていたから...
「A...？」
先生の声が、優しく私に呼び掛ける
「もう一度俺と、付き合って？」
懇願するように
優しく私に呼び掛ける
「...ッ、はいっ」
堪らなくなって
泣きながら頷いた
「おいで...」
先生の腕がそっと私の背中を抱き寄せ
今一度、隣に座った先生のそこへ収まる
「正直に言うと
Aがいないと全然ダメなんだ...」
「...ッ先生」
「歯科助手の枠も空くから、戻って来て欲しい」
「え...」
まさか職場まで一緒になれるとは思わず
驚いて顔を上げた
「辞めるんだ、田村さん
思いの外つわりが酷くて」
田村さんに婚約者がいる事は知っていた
じゃあ、ホントに私は戻れるの...？
戻ってもいいの？
正直、体はもう限界だった
今日もやっとの思いで仕事をこなし
これ以上痩せたら病院に行くからと
母にも言われていた
「だから、戻っておいで...(笑)」
そう言って眉毛を下げて微笑む先生の指が
零れた涙を優しく拭い
「守ってくれて、ありがとう...」
もう一度私を、優しく抱き締めた
加藤さん曰く
先生は敢えて結婚を控えている田村さんを
選んだんだそう
「まったく公私混同も甚だしいよね〜」と
嬉しそうに笑っていた
そして信じられない事がもうひとつ
「脅したりして、悪かった...」
勤務最終日、伊勢谷先生が謝って来たのだ
先生が伊勢谷先生と
どんな話をしたのかはわからない
でも、職場まで迎えに来てくれた車内で
それを伝えた時
「そうか...」
先生はそう言って、少しだけ微笑んだ
目を伏せたその横顔を見た時
願わくば
私と同じ想いをする人がいませんように
そう願った
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神鹿(プロフ) - 見つけられました！ありがとうございます！ (2021年9月2日 23時) (
レス) id: 874191ca7a (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - 神鹿さん» 神鹿さん、私の作品ページから飛べませんか？出来ないようであれば神鹿さんの設定R18作品を読めるように変える必要があります。 (2021年9月2日 8時) (レス) id: d1c1872a15 (このIDを非表示/違反報告)
神鹿(プロフ) - スミマセンが 別部屋へは どうやったら読みに行けますか？ (2021年9月1日 22時) (レス) id: 874191ca7a (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - はるさん» はるさん、嬉しいお言葉のオンパレード！感激です。長らく放置していて気がかりだったお話を完結できて、私もほっとしています。一緒に楽しんで下さり、こちらこそありがとうございました。 (2021年9月1日 0時) (レス) id: d1c1872a15 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 最後まで、ドキドキしながら読ませて頂きました。ありがとうございました。amiさんの言葉使いが大好きでした。終わり方も、ほっとする？爽やかな？心が明るくなる様なエンディングで、何度も読み返したい作品です。本当にありがとうございました。 (2021年8月30日 10時) (レス) id: 533b71ddc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ami
| 作成日時：2017年9月18日 12時
