二度目の旅行12 ページ48
「ん？何が遠いんですか？」
アイツがトイレから戻ってきた
「ん？何でもないよ！独り言...！」
せっかくの旅行
こんな事で台無しにしたくなくて
慌てて誤魔化した
「ん？(笑)」
ニコニコしながらイスに腰を下ろしたアイツ
「いただきまぁす(笑)」
そのまま流れるように
湯気の立つコーヒーカップをゆっくり口へ運んだ
ほぅ...
その瞬間
周囲から聞こえた感嘆のため息
ただコーヒーを飲んでいるだけなのに
その姿があまりに絵になっていて
やっぱり...遠い
「・・・・」
「Aさん」
「...え、あ、何？」
コーヒーを飲むアイツの姿を見つめ
宙をさまよっていた意識を現実に戻された
「なんだか、ごめんなさい...」
「え？何が？」
「まさかこんなに騒がれると思ってなくて...」
アイツがテーブルの上で腕組みをして
俯きがちに呟いた
「はぁ...」
小さく、ため息までついて
チャンミン...
そうだよね...
この旅行、誰より楽しみにしていたのはアイツ
約束の30分前には迎えに来て
鞄をパンパンになるまで荷物で膨らませて
だからきっと
私より一番アイツが堪えているはず
「大丈・・・」
「でも、大丈夫です」
アイツがニッコリ笑ってそう言った
「え...大丈夫って、どうして？」
「こんな事もあろうかと...ふふっ(笑)」
イスに掛けてあったリュックの中を
ガサゴソと漁り出す
「変装グッズを持ってきたんです！」
変装グッズ！？
「ジャーン！これです！(笑)」
アイツが満面の笑みで取り出したもの
それは、黒い眼鏡ケース
「これって...」
ブラウンのサングラスケースと一緒に
アイツの鞄に
ぎゅうぎゅうに押し込まれていたヤツだよね
「ふふ、これを掛ければ
もう誰も僕だと気付かないはず(笑)」
それをアイツが嬉しそうに開けた
...パカッ
するとそこには懐かしの三種の神器のひとつ
「牛乳瓶の底眼鏡」が入っていた！
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
