二度目の旅行10 ページ46
「あ...チャンミン」
これはもちろん
怒ってるんだよね
真っ赤な顔で握り締めた拳まで震わせて
私に詰め寄るアイツ
「Aさん！」
こ、これは...
正直にありのままを話したら
絶対面倒臭い事になる
「み、道を聞かれただけだよ...？」
「ホントですかぁっ！」
近ッ！
アイツがズイッ！とこっちへ身を乗り出した
「う、うん...」
ただでさえ近い距離
目の前に迫ったアイツの顔から
逃げるように後ろへ体を反らす
「じゃあ、何であんな事言ってたんですかっ！」
「あんな事って...
なんなの？ってヤツ？」
「そうです！」
「あぁ...アレは
なんだかちょっと変わった人で」
「どんな風にぃ！」
「どんな風って...」
まさか「タイプ」だと言われたなんて言えない
「僕のAさんに変な事したらただじゃおかないんだから...ブツブツ...で、どんな風に！」
今日のアイツは何だかしつこくて
面倒臭さに磨きがかかっている
「それは...そう！
ジャ、ジャイアンとのび太みたいな！」
これは嘘じゃない
「ジャイアンとのび太...ですか？」
...ん？納得したのか？
アイツの口調が途端に柔らかくなった
チャ、チャンス...！
「そうそう！ジャイアンとのび太！」
「ジャイアンと...のび太」
アイツの拳から
徐々に力が抜けていくのがわかる
それに真っ赤だった顔色も
「ジャイアンと...プッ(笑)
のび太！プププ...(笑)」
ジャイアンとのび太なら相手にもならない
とでも言いたいのか
バカにしたように揺れるアイツの撫で肩
「クスクス...(笑)
ジャイアンとのび太だって！
可哀想に男にも見られてない(笑)」
いやいや
ジャイアンとのび太だって立派な男だよ？
「それに引き換え僕は・・・」
グイッ！
「え...」
アイツが思いきり腰を抱き寄せた
ちゅっ...！
「！！！」
そのまま唇にぶつかるようなキス
「こんな事もできる、彼氏ですから！(笑)」
・・・ってアホか！そんなの当たり前だろ！
「ふふっ...
唯一無二の！カ・レ・シです(笑)」
ここは観光地
突然現れたバカップルを見る周囲の目は
当然冷たい
でも、そんなことお構いなしの
ある意味「唯一無二」の私の彼氏は
引き寄せた腰をふんわり抱き締め
見上げる私の顔を見つめて
一人、満足気に笑っている
はぁ...
心の中で深〜いため息をついた
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
