涼さんのおかげ ページ20
「ごめんね、涼さん...」
泣きたいだけ泣いて
少しだけ落ち着きを取り戻した私は
私を抱き締める涼さんの胸から体を離した
「何に対して謝ってるのよ」
「だって、制服がびしょ濡れに...」
「バカね。制服なんてどうだっていいのよ。
それより仕事をほっぽり出した事に対して謝って欲しいわ」
「あ...！そっか、ごめんなさい」
「クスッ(笑)」
え？クスッ...？
「なーんてね。
今日は荷物をまとめに来ただけ(笑)」
「...そっか」
涼さんがもうすぐ
ホントにいなくなってしまうと思ったら
また...涙が零れそうになった
「それよりA」
「...ん？」
「こんなずぶ濡れじゃあ仕事どころじゃないんじゃない？今日は休むって電話しなさいよ」
「えっ...でも
それってずる休みじゃあ・・・」
「なに言ってんのよ。
有給があるのにろくにくれない会社。いいのよ、たまには」
確かに、有給なんて使わせて貰った記憶はない
「ね、それで私の引っ越しの準備手伝ってよ！
で、その後は女子会よ、女子会！(笑)」
こんな私の前で
これでもかってくらい明るく振る舞う涼さんに
雨に打たれて冷えきった体も
そして心も
ほんわか...あったくなる
「...うん(笑)」
今こうして少しでも笑えるのは
確実に涼さんのおかげ
「じゃあ、私は残りの荷物まとめてくるから
Aは休むって電話しときなさいよ(笑)」
「うん」
.
それからほどなくして
準備を済ませた涼さんが戻ってきた
「下着はそこのコンビニで買えばいいわよね。
あ！でも女子会の料理はデパ地下で買っていきましょ」
「え！私の下着より料理にお金をかけるの！？」
「当たり前じゃない！
男に見せる訳でもあるまいしコンビニで十分よ、十分！ほら行きましょ？相合い傘でいいわよね」
「うん」
幸い、出勤時間とずれていたから
駅に着くまで
職場の誰とも顔を合わす事はなかった
なかったんだけど...
「あっ...」
今私が誰より会いたくない人が
「ハァハァッ、Aさんっ...」
小雨が降る中
傘もささずに
息を切らしてそこに立っていた
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
