まだ何も言ってないのに ページ15
アイツと付き合い初めて今日まで
アイツの心変わりを疑った事は何度かあった
でも、今回は今までとは訳が違う
なぜって...
アイツが自ら相手の女性を求めているんだから
"Aさんもさっき...
同じ事してましたよね？"
私以外の女性を抱き締めるアイツの
全てを諦めたかのような眼差し
「もう、遅いのかな...チャンミン」
ポトリと涙がアスファルトに零れ
地面に小さくシミを作った
もっと早く妊娠の事を打ち明けていれば
こんな事には、ならなかったのかな...
「...ッ、チャンミン」
またひとつ
私の涙が地面にシミを作ったかと思ったら
ポツポツ...
まるでその涙を認めないかのように
悪いのは全部私だと言っているかのように
雨が、降りだした
傘を持っていなかった私は
徐々に激しくなる雨の中
ずぶ濡れになりながら職場に向かった
そうして職場に着くと
「...あ！A！
ちょっと何やってるの！ずぶ濡れじゃない！」
ちょうど通用口近くのゴミ捨て場で
ゴミを捨てていた涼さんが駆け寄ってきた
「あ、うん...
途中で降られちゃって...」
涼さんに手を引かれ
とりあえずゴミ捨て場の屋根の下へ
「途中でって
コンビニがあるで・・・」
ふわっ...
「...え」
ポケットから取り出したハンカチで
私を拭いてくれていた涼さんが
突然、その腕に私を抱き寄せた
「涼、さん...？」
「もう、ホントにバカな子。
妊娠してたらどうするのよ。こんなんじゃ母親失格よ...」
言いながら、涼さんの胸に収まった私の髪を
優しく撫でてくれる
「...ッ、涼さんっ！」
だから...
涼さんには隠し事ができない
まだ「何も」言ってないのに
こうして「何か」あった事を
気付かれてしまうんだから
.
「...ッチャンミン、チャンミン！」
ザァザァと
私の泣き声をかき消すかのように降る雨の中
私が泣き止むまで
涼さんは何も言わず
ただ優しく、私を抱き締めてくれていた
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
