恋人同士なんかじゃない ページ13
「...それで
女性だって嘘をついたの？」
「うん...」
アイツがいなくなった駅のホーム
いくつか電車を見送って
それでも泣き止まない私の話を
涼さんが聞いてくれていた
「はぁ...ホントに、バカな子」
大きなため息をついた涼さんが
再び優しく私の肩を抱き寄せた
端から見れば、こうやってる私達は
アイツがそう見えたように
「恋人同士」に見えるかもしれない
「でも"私"は
そんなバカなAが大好きよ...(笑)」
「涼さん...」
「ヨシヨシ...もう泣かないの。
ありがとね、A...(笑)」
でも、私達は決して恋人同士なんかじゃない
だって涼さんは「女性」だから
アイツに伝えた通り「女性」なんだから...
「でも...
彼はずっと疑っていたのね、私達の事」
「うん...ひどい事しちゃった」
「そうね...いくら自分の事でいっぱいいっぱいだったからって、それじゃあいい女とは言えないわよ」
涼さんの、こうやって
ハッキリ言ってくれるところが好き
「うん...」
「今からでもまだ遅くないわ。
とりあえず電話で嘘をついた事を謝んなさいよ。妊娠の事はそのあと、まずは誤解を解かなくちゃ」
「えっ？今？」
自分の中にそんな考えはなくて
涼さんに預けていた顔を上げて
マジマジとその顔を見た
「何よその顔。今すぐに決まってるじゃない！」
でもあんな状態で
私の話聞いてくれるかな...
もしかしたらあの女の子と
ホントに一緒に家に帰ったかもしれないのに
じわっ...
あ、思い出したらまた涙が...
「いい？A」
「...ん、なに？」
「私にはもう時間がないの！ほら泣かない！」
涼さんが荒っぽく
素手で涙を拭ってくれた
「こんな状態で向こうに行っても
気になって勉強どころじゃないじゃない！」
うっ...確かに
「だから今すぐ電話しなさい！今すぐ！」
手にしていたケータイを
グイグイと胸に押し付けられて
「う、うん、わかった...」
戸惑いながらもアイツに電話した
RRR...
「必要なら代わりなさいよ」
「うん...」
RRR...
「それにしても、Aの彼氏がモデルのチャンミンだったなんて。彼の母性本能をくすぐる眼差し、好きなのよねぇ...(笑)」
私の隣で
若干声を踊らせている涼さんの言葉を聞きながら
アイツが電話に出てくれるのを待ったけど
「いい？必要ならすぐに代わりなさいよ。
す・ぐ・に！」
「うん...」
結局その日
アイツが電話に出てくれる事はなかった
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作者名：ami
| 作成日時：2015年11月10日 12時
