斉藤さんの告白 ページ11
「プッ...後ろ見て？
すごいことになってるよ(笑)」
斉藤さんと一緒に出たパティオでそう言われ
後ろを振り返った
見ると、天井まである大きな窓に両手を着いて
まるでクモのように
窓にへばりついているアイツの姿が
チャンミン...
曲がりなりにも人気モデルなのに(ひどい言い草)
「高い鼻が邪魔そうだね、クククッ...(笑)」
窓に押し付けられて、無惨に潰れてしまった
アイツの高い鼻を笑う斉藤さん
「あっ、剥がされた(笑)」
斉藤さん...
ホントにいい性格してますよね
「はぁ...」
わかってはいたけど
こんな事になって、後が恐ろしい
「あの、斉藤さん。話って何ですか？」
外で話そうと誘われ
面倒くさい事になるのを承知で
ここまでやって来た
しびれを切らしたアイツが
撮影をほっぽり出して
飛び出して来ないとも言えない
これ以上騒ぎになる前に戻らないと
「あぁ、ちょっとあそこに座ろうか」
そう言って斉藤さんが指差したのは...
わぉ！雰囲気たっぷり！
程よくライトアップされた木製のベンチ
あんな所で話なんて...アイツは大丈夫？
恐くてもう後ろを振り返れない
「はぁ、雰囲気いいね(笑)」
ええええ、ホントに恐いくらい
私と違い、一人楽しそうな斉藤さんの隣に
そっと腰を下ろした
「ねぇ、竹内さん」
「はい」
「竹内さんは彼と一緒にいて幸せなの？」
いきなりそう聞かれて戸惑いつつも
迷うことなく返事をした
「はい、幸せです」
これははっきり言い切れる
「そっか」
「はい...」
話ってこれだけ？
わざわざここに来て話すような事？
疑問でいっぱいの瞳を斉藤さんに向ける私に
再び斉藤さんが唐突に聞いてきた
「俺がこっちに来た理由は何でか知ってるよね？」
「はい。友達の結婚式、ですよね？」
「そう」
それがどうかしたの？
「その友達の奥さん...
つまり新婦は、俺の彼女だった人なんだ」
「えっ...」
想像もしていなかった斉藤さんの告白に
一瞬動きが止まった
「俺、もともとこっちの人間なんだけど...」
「えっ、そうなんですか？
ならどうしてウチのホテルに？」
「あぁ、今は両親も別の所に引っ越していないんだ」
「そうなんですか」
「うん」
だからウチのホテルに宿泊を
「それであのホテルに就職が決まって、その当時付き合ってた彼女と遠距離恋愛になったんだ」
遠距離恋愛...
その難しさは、ついこの間経験したから
よく知ってる
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作者名：ami
| 作成日時：2015年6月27日 10時
