わかるわけない ページ42
「...どーして、わかってくれないの？
Aさんならわかってくれると思ったのに...」
俯いたアイツが呟いた
「...わかるわけない。
わかるわけないよ、チャンミン...」
南川さんを抱き締めた事も
嘘をついた事も
わかるわけない
「...Aさんだって」
「え...？」
「Aさんだって、仕事の延長とか何とか言って、斉藤さんと二人で出掛けたくせにっ...」
アイツが泣きながら俯いていた顔を上げた
「チャンミ・・・」
「どーして僕ばっかり責めるの！
あの日僕がどんなに辛かったか、ホントにわかってるっ...？」
ゴシゴシと零れる涙を服の袖で拭うアイツ
「そ、それはもう謝ったでしょ？何で今さら蒸し返すの？」
「だったら、Aさんも許して下さい」
「えっ...」
「謝るから、嘘ついた事謝るからっ...！」
「嘘ついた事だけ...？
南川さんを抱き締めた事は？」
「だからそれは、仕方がなかったって言ってるじゃないですかっ！」
仕方がなかったって...
「「・・・・」」
しばらく二人で見つめ合った
長い沈黙が流れ...
その沈黙を先に破ったのは
「...ごめん、チャンミン」
私だった
「やっぱりわからない...。
チャンミンの言ってる事が」
「えっ...」
私はくるりとアイツに背を向けた
今はもう、話しても無駄だと
そう思ったから
「Aさんっ！」
ゆっくり歩き出した私を
アイツはひき止める事はせず叫んだ
「どーしてわかってくれないんですか！！」
だからわからないって、言ってる...
「僕だって、か、帰りますよっ！
明日はバイトだから！！」
...帰ればいい
「ホントにホントにっ...！
帰っちゃいますよっ...！！」
アイツが泣きながら叫んでいるのがわかった
...だから
帰ればいいって...
言ってるのに...
「Aさんっ...！」
「...ッ！」
アイツと同じように私も...
涙がどうしようもなく溢れて
止まらなかった
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作者名：ami
| 作成日時：2015年3月28日 22時
