焦る気持ち ページ38
翌日、僕は再び新幹線に乗り
Aさんの元へ向かった
もちろん、Aさんの誤解を解くために
モデルのバイトに
急遽スケジュールの変更があり
明日は仕事になってしまった為
遅くても今日の終電で帰らないといけない
Aさんは早番だから
仕事が終る夕方から終電までの間に
何とか話を聞いて貰って誤解を解かないと
夕方、予定通り
Aさんの働いているホテルに着いた
「わぁ、おっきい...」
海沿いの白亜のホテルを下から見上げる
一体、何部屋あるんだろう...
こんなすごい所で
Aさんは頑張っているんだと思ったら
「Aさん...」
優しく、抱き締めてあげたくなった
「ごめんね...Aさん」
Aさんは誰も知り合いがいない土地で
一人で頑張っているのに
それなのに僕は...
再び涙が零れそうになった
でも、メソメソ泣いてばかりはいられない
Aさんが出て来たらすぐに話しが出来るよう
従業員通用口を探すことにした
「多分この辺りにあると思うんだけど...」
それらしい場所をウロウロしていると
「何か御用ですか？」
後ろから声を掛けられた
「はい、あの・・・」
振り返るとそこにいたのは
憎っくきライバル"斉藤さん"だった
「...ッ！」
みるみるうちに自分の顔が
強ばっていくのがわかる
「...ん？うちの従業員に御用ですか？
もしお急ぎならフロントに行って頂いた方が早・・・」
「Aさんですっ！」
「...え」
「竹内Aさんに用がありますっ！」
彼の話を遮ってそう告げた僕は
「...竹内なら
もうそろそろ上がる頃だと思いますよ」
腕時計に目を落とし
落ち着いた口調でそう言った彼とはエライ違い
明らかに一人嫉妬丸出しで
Aさんと付き合っているのは僕のはずなのに
なぜか負けた気がした
「じゃあ...」
僕に軽くお辞儀をして
従業員通用口に入っていった彼が
僕の存在をどう思ったのかはわからない
そもそも、彼に気があるのかどうかさえ
わからないのに
なぜか僕の方は明らかに焦っていた
早く誤解を解いてAさんと仲直りをしないと
Aさんを彼に取られてしまいそうな気がして
Aさん、早く出てきて...
今すぐAさんに会って
話を聞いて貰いたくて
気持ちばかり焦っていた
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作者名：ami
| 作成日時：2015年3月28日 22時
