本気で好きだから ページ21
しばらく何もする気になれず
ソファの前に座り込んでいると
カタン...
玄関の方で音がした
もしかして帰ってきた...？
ガチャ...
リビングのドアが開いて帰ってきたのは
「A？そんな所で何してるの？」
幸哉だった
ほっ...よかった
予想通りの展開だったとはいえ
アイツに事実を確かめるのが怖かった
「おかえり...」
「ただいま」
私の様子に
幸哉もソファの前に跪いた
「どうしたの？」
その膝の前に転がるアイツのケータイ
「・・・・」
「A？」
「ねぇ幸哉
聞きたい事があるんだけど...」
「なに？」
「男の人はやっぱり
初めての相手を忘れられないものなの？」
突然そんな事を聞かれて
一瞬戸惑いの表情を見せた幸哉
「そうなの？」
私が必死な顔でもしてたのか
フッと笑って私の頬を軽くつねった
「人にもよるんじゃないの？」
人に、よる...？
「俺の場合は忘れられない...」
「どうして？」
「そりゃ本気で好きだったからに決まってるだろ」
ズキン...！
幸哉の言葉に馬鹿みたいに胸が痛んだ
"本気で好きだから"
そんな事わかりきっていた筈なのに
今更になってホント馬鹿みたい
ふと目の前に座る幸哉を見ると
寂しそうな顔
「幸哉？」
「A...俺、どうしても忘れられないんだ...別れた彼女の事」
自分の足元をぼんやり見つめたまま
幸哉が言った
「初めてできた彼女だった...。
ホントに本気で好きで結婚したいと思ってた...だけど元彼とよりを戻すからって、あっさりフラれちゃったんだ」
幸哉が寂しそうだった理由は
これだったんだ...
「その元彼がチャンミンさんみたいに格好いいヤツで、ここと同じ様なマンションに住んでてさ...だからつい、この家に来た日に嫌味な事言っちゃって...ごめんな」
そう言って
「こんなガキだから
フラれるんだよな...(笑)」
寂しそうに笑う幸哉の顔を見ていたら
「何だよA、お前が泣く事ないだろ」
知らない内に涙が零れていた
「泣くなよ...」
今にも泣きそうな声で呟いた幸哉に
ふんわり抱き締められた瞬間
チャンミン...
なぜかアイツを思い出して
涙が止まらなかった
幸哉に抱き締められながら
チャンミン...どうして？
アイツを求めて伸ばした手が
幸哉の背中に触れた時
「何...してるの？」
アイツが家に帰って来た
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作者名：ami
| 作成日時：2013年8月7日 12時
