第83話 俺が怖いか ページ41
【頭に、声が聞こえたんです。】
｢…声。｣
私はあの時のことを真剣に思い出そうとしていた。
そう、あの時確かに私は助けを呼ぶ声を聞いた。
カリファさんにルッチが戻ってきていないと聞いた時に、頭に助けを呼ぶ声が聞こえたため、私はルッチを助けに行かなければと思ったのだ。
あの声を頼りに走ると子どもがいた。ルッチではなかったが…。
【あなたを助けなければと思ったんです。でも逆に助けられてしまいましたね…。】
｢…。｣
ルッチはヘラと笑う私を不穏な目付きで見た。
私はその表情に少しすくんだ。
｢…何故、他人のために命を張る…。｣
ーー他人のために…。それは…。
【あなたもでしょう？】
ルッチはその言葉を見て、目を大きく開いたと思ったらククッと笑った。
｢…お前はつくづく面白い。震えながら泣いていたかと思えば、俺に皮肉を言う…わからんな。｣
そう言ってまた笑う。
どうやら震えていたことに気づかれていたようだ。
【…夢を見ました。あなたが…助けてくれた。】
顔を熱くしながら書いた文字を見せると、笑っていたルッチは口を曲げる。
｢…俺の…。｣
そう言ってルッチは腰掛けていたベッドに上がり、膝を立てる。
近づいてきたルッチに何やら危機感を覚え、持っていたスケッチブックで顔を隠すが、ルッチに引き剥がされ、床に投げられた。
布団を踏まれ、身動きがとりにくい。そんな私にルッチはグイグイと迫る。
｢…怖かったな。人間死に際を味わうなんて滅多にない。トラウマが残るのは致し方ない。｣
ルッチは布団で隠れた私の足を挟むように跨る。
｢…俺が怖いか…？A。俺の顔を見ただろう、あの時。｣
ーー怖い…？
ルッチが言ったのはあの時の事だろう。私を助けたのは、大きな身体をしたルッチだった。
確かにルッチは怖い時もある。
しかし助けに来た彼を見た時、怖さなんて感じなかった。
感じたのは…安心。ただそれだけだ。
私は顔を横にぶんぶんと振る。それしか表現が出来ないからだ。
ルッチはフッと笑うと、目の前で立ち膝になる。
私の頭上にあるルッチの顔を見ようと頭を上げた時、両手で私の胸ぐら掴まれ、そのままルッチに引き寄せられる。
『！…っ！』
驚いて目を瞑れば、唇にあの感触。次に目を開けた時には、目の前にはルッチの鋭い眼光があった。唇は未だに触れ合ったままだ。
怖いかと聞いた彼の顔はどこか悲しく、私には彼を突き放すことが出来なった。
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アタル(プロフ) - サクラさん» サクラさん、ありがとうございます！コメントで感想を送ってくださると本当にやる気が出ます。自分で始めたので頑張るというのもなんか変な感じですが、頑張ります！ (2019年10月12日 17時) (
レス) id: e103d991e7 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ - カクもルッチもカッコいい…！毎回キュンキュンさせてもらってます！更新頑張ってください！ (2019年10月12日 16時) (レス) id: 2be65d96af (このIDを非表示/違反報告)
アタル(プロフ) - akane10746さん» 前回からコメントありがうございます！続けてみてくださっていてとても嬉しいです！頑張ります。 (2019年10月8日 13時) (レス) id: e103d991e7 (このIDを非表示/違反報告)
akane10746(プロフ) - 毎回面白いです!更新頑張ってください！！！ (2019年10月8日 9時) (レス) id: 38a8873821 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アタル | 作成日時：2019年10月7日 0時
