星が鳴る【時透無一郎】 (ページ21)

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星21個ページ21

「こっちが前に話した星鳴Aちゃん。」

「よろしくお願いします。」

「で、こっちが俺の同期の竈門炭治郎と嘴平伊之助。」

「よろしくお願いします。」

我妻君の司会で、互いに名前はわかった。
耳飾りの子の竈門炭治郎君はよろしくの言葉と一緒に小さく礼をした。

真面目そうな子だなって言うのが印象。

そして、猪の被り物の子の嘴平伊之助君は何がしたいんだろう。

何も喋らないで、じーっと私の方を見てる。
……見てる？
猪の被り物でどこを見ているのか分からないけど、視線だけは感じる。
ちょっと怖い。

「えっと、嘴平君だよね？よろしく。」

打ち解けるためには会話をした方がいいって、誰かが言ってた気がする。
震えそうな声をなんとか絞り出すけど、返事はない。
風が窓を叩く音だけが、部屋に響いた。

「あ!!!思い出したぞ!!紋逸が強いって言ってた雌だろ!!」

大声に肩が跳ねる。
嘴平君は物凄い音の踏み込みをすると、私のベッドの前で仁王立ちしていた。

「俺と勝負しろ!!」

「無理、嫌、嘴平君の怪我を悪化させたくないから絶対無理。」

少し離れておこうと思って、ベッドから下りて彼が元いた方向に向かう。
手足に残っている痺れが、一歩ごとに感覚を刺激する。

「勝負しろ!!」

声と共に襟を掴まれる。
首が閉まるような感覚にびっくりして、思わず回し蹴りをしてしまう。

嘴平君の体が地面に倒れる。

「あ!!ごめん!!大丈夫!?本当にごめん!!」

彼は低く唸っていて、ちょっと痛そうだった。
いくらなんでもやりすぎた！本当に申し訳ない。

「……蹴り、重い…」

「ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!」

たまたま近くを通ったアオイちゃんに事情を説明して、氷嚢を貰う。それをおそらく私が蹴り飛ばしたであろう箇所に置く。

「蹴り、すごいね。」

事情を知った胡蝶さんに嘴平君と一緒に怒られてしばらく経った頃、竈門君が口を開いた。

「ありがとう。本当は剣術より体術の方が得意なんだ。」

怖がられちゃったかな。
竈門君の顔を見るのが怖くて、下を向く。

「大丈夫!怖いなんて思ってないよ。ただ、純粋にすごいと思っただけだから、安心してくれ。」

その言葉を驚いて、反射的に顔を上げる。
今までの殿方のほとんどは、気味悪がったのに。

明日から頑張って彼らに話しかけようと思うには十分すぎるほど嬉しい言葉だった。