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入学式は、滞りなく進んだ。次期魔王最有力候補とも名高いサリバン校長に、かの有名なアザゼル家のご令嬢の生徒代表挨拶はかなり聞き応えのあるもので、飽き性な悪魔達の中にも、しっかりと聞き入っている者がそれなりの数見えた。校歌の歌詞の物騒さに少々緊張していた私も、2人の言葉を聞き、元気づけられたような気がした。
先に新入生達が退場し、校舎で今後数日の流れなどを説明される。この間に、両親はもう帰宅している頃だろう。プリント類を受け取り、胸にコサージュを刺したまま、校舎を出る。
外に出て、少し歩いた所だろうか。不意に、何かに袖を引っ張られる。傾きかけたバランスを整えて振り返ると、1人の男子生徒が私の制服を掴んでいた。
『あ、あの⋯⋯?』
「ちょっといいすか」
返事をする間を与えることなく、彼は私の手首を掴むと、何処かへ足を進めた。
『えっ、えっと、どこに⋯⋯』
「いいから」
私を引っ張る男子生徒は、躊躇なくどんどん足を進めていく。このまま、着いていってしまってはいけない気がした。けれど、抵抗すれば周りに注目されてしまう。もつれそうになる足を動かすのに苦労しているせいで、混乱した頭がうまく働いてくれない。気が付けば、校舎の裏らしき所まで来てしまった。周りには、誰もいない。
男子生徒は辺りを軽く見渡すと、ようやく足を止めた。掴まれた手はそのままだ。恐る恐る視線を上げると、何かを観察するかのような、遠慮のない目がじろじろとこちらを見ていた。何を考えているのか、全く読めない。
(⋯⋯まさか、人間の血が混ざってるってバレた⋯⋯?)
不意に、最悪の予感が頭によぎる。そんな、香水だっていつもよりも濃い目につけていたし、変な行動も取っていないのに。けれど、彼が私をここまで連れてくる理由が他にあるだろうか?知り合いでもないし⋯⋯そう思いながら、ふと、何かの小さな違和感が生じたことに気がついた。あれ、この男子に、本当に見覚えはないのだろうか。
「⋯⋯やっぱり」
少し掠れた独特の声を発した唇が、三日月型に曲がる。まるで、獲物の姿を捉えた捕食者のような笑み。それを見た瞬間、一つの光景がフラッシュバックした。
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いらお(プロフ) - お皿さん» ありがとうございます、はてなマークに笑っちゃいました(笑)応援とても嬉しいです、頑張ります! (2023年3月2日 7時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
いらお(プロフ) - りうっこさん» 返信遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、ストライク取れて光栄です!ゆっくりにはなるかと思いますが、更新した際にはぜひチェックしてやってください…! (2023年3月2日 7時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
お皿(プロフ) - 陰から応援してる者です...もう、本当に大好きです...ありがとうございます(泣)(?)これからも陰ながら応援させていただきます。頑張ってください!! (2023年3月1日 22時) (レス) @page27 id: 5bd738696b (このIDを非表示/違反報告)
りうっこ - ぶっ刺さりました。ドストライクです… 割と久しぶりの感覚かもです!更新めちゃくちゃ楽しみにしてるので、頑張ってください!! (2023年2月3日 9時) (レス) @page26 id: 182708b139 (このIDを非表示/違反報告)
いらお(プロフ) - 明日花さん» コメントありがとうございます、すごい嬉しいです!拙い作品ではありますが、明日花さんの性癖に刺さったのでしたら光栄に思います。ゆったり更新してまいりますので、気が向いた時にでもまた本作品を読んでいただければ幸いです! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いらお | 作成日時:2022年12月28日 16時